2007 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における産業化の政治社会構造的要因の地域比較分析
Project/Area Number |
05J00968
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
太田 有子 International Christian University, 社会科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 工業化 / 近代日本 / 比較分析 / 地域経済 / 陶磁器産業 |
Research Abstract |
本研究は、近代日本の工業化の地域的特色とその政治・社会的背景を明らかにするものである。明治政府下における政府及び各地域の行政機構と産業従事者の関係の変容が、各地域の工業化の過程や規模に与えた影響を当時の主要産業の一つであった陶磁器産業を中心に分析する。特に明治期以降、陶磁器生産が発展した地域と急速に衰退した地域を対象に、中央政府、地方自治体から同産業に対して行う制度・財政的支援や各地域の産業構造、当該産業従事者の資本調達能力などの点において比較分析を行い、行政機構の再編が各地域の産業に与えた影響を検証し、工業化の政治・社会的要因を考察する。 前年度までに、明治期以降、陶磁器産業が発展した地域と急速に衰退した地域に関する資料の収集・分析を行っており、今年度は、補足資料の収集・分析とともに各地域の工業化の規模や過程に関して比較分析を行い、その背景要因を検証した。調査分析を通じ、徳川期以来の政治社会構造が明治期以降も各地域の産業構造を持続的に規定している側面がある一方で、政府と地方自治体、商工業者の関係が、各地域の工業化の規定要因として当該産業をめぐる資本環境に作用しており、産業資本の内容、集中度、工業化の規模等にも影響していたことが明らかになった。 本研究を通じ、明治期以降の行政機構の再編は、各地域の既存条件に規定されつつ、産業構造の変容を促し、工業化の規模や過程に影響を与えたことが明らかになった。従来の近代日本の工業化に関する理解の中心である政府主導型の工業化という経路だけでなく、民間主導型や官民連携型の工業化の経路なども確認され、複線的な工業化の経路とその政治・社会構造的要因を示したことが本研究の成果といえる。調査分析結果の一部については国際学会にて報告を行い、またその詳細に関して論稿としてまとめる作業を行っており、学術誌に発表の予定である。
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Research Products
(1 results)