2006 Fiscal Year Annual Research Report
亜熱帯地域における大気エアロゾルの光化学特性について
Project/Area Number |
05J01004
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
岡田 孝一郎 琉球大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 全溶存鉄 / 辺戸岬 / 亜熱帯地域 / 沖縄 / エアロゾル |
Research Abstract |
琉球大学と辺戸岬の2ヶ所にハイボリウムエアサンプラーを設置し、フィルター上にエアロゾル粒子を採取した。採取したフィルターを超純水に浸して撹拌し、エアロゾル中の水溶性成分を抽出した(エアロゾル抽出液)。このエアロゾル抽出液中に含まれる溶存成分(主要な陽・陰イオン、溶存有機炭素、全溶存鉄)を測定した。 硫酸イオン、全溶存鉄、溶存有機炭素濃度は、2005年11月に他の期間よりも高かった。後方流跡線解析を用いて気団の流跡を調べると、濃度が高い期間の気団は中国大陸方面から到来しており、その前後の期間は太平洋や日本列島方面から到来していることが確認できた。これらの成分は化石燃料の燃焼で排出される排気ガスに含まれているので、中国大陸に存在する工業地帯から排出される物質が輸送されてきたと考えられる。また、エアロゾル抽出液中のどの溶存成分も6月から10月にかけて最も低濃度を示していた。沖縄本島では、夏季には東からの風が卓越するので太平洋の清浄な気団の影響、冬季に西からの風が卓越するので大陸の汚染物質を含む気団の影響がある。この6月から10月の期間は、太平洋の清浄な気団の影響を受けたエアロゾルが飛来しているため、様々な溶存成分が低濃度を示したと考えられる。 全溶存鉄、硫酸イオンと硝酸イオンは、琉球大学が辺戸岬よりも高濃度であることがわかった。鉄、硫酸塩や硝酸塩は人為起源物質だと考えられるため、琉球大学で採取されるエアロゾルは辺戸岬よりも人為的影響を受けていることが示唆された。また、全溶存鉄は、非海塩性硫酸イオンや水溶性有機化合物と比較的強い正の相関を示した。非海塩性硫酸イオンは工場などを起源とし、有機化合物は鉄の溶解度を増加させることが知られている。これらのことから、エアロゾル中の鉄は工場などを主要な起源とし、長距離楡送される過程で溶存態が増加していくのではないかということが考えられる。
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Research Products
(2 results)