2005 Fiscal Year Annual Research Report
中世韻文学における和漢の古典摂取による表現の形成と展開の研究
Project/Area Number |
05J01012
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小山 順子 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 日本文学 / 中世文学 / 韻文学 / 新古今和歌集 / 和漢比較文学 / 和歌 |
Research Abstract |
本年度は「藤原良経の漢詩文摂取-初学期から「二夜百首」へ-」(『国語国文』第74巻第9号、平成17年9月)と「室町時代の句題和歌-永正三年五月四日杜甫句題五十首について-」(龍谷大学仏教文化研究叢書15『中世の文学と学問』思文閣出版・平成17年11月)の二篇の研究論文を発表した。前者では、新古今時代の代表歌人であり、同時代の和歌への漢詩文摂取を主導したと見なされる藤原良経を取り上げ、その初期の作品群に見られる漢詩文摂取を検討することで、その意義と位置づけを試みた。従来、漠然と摂関家という環境に還元されて論じられてきた、藤原良経の和歌に見いだされる漢詩文摂取が、同時代の歌人である藤原定家の影響を濃く受け、そこから発展させる形で展開し、新古今時代の和歌表現の特徴の形成へ結びついて行くことを論じたものである。後者は、和歌における漢詩文摂取の中で、最も端的な技法である句題和歌を俎上に乗せた。中世後期に催行された「杜甫句題五十首」を取り上げた。それまで、『白氏文集』や『和漢朗詠集』『千載佳句』から取った句題を用いることが主であったが、この永正年間には、これまで用いられることのなかった句題が用いられ始めている。中でも、杜甫の詩から取った句題を用いた「永正三年五月四日杜甫句題五十首」は、句題和歌の歴史から見ても注目される。この杜甫句題五十首の句題と和歌表現、および句題の選び方から、句題和歌が漢詩の内容に和歌を近づけるのではなく、句題を和歌へ近づけて解釈し、和歌に沿わせる形で句題和歌が成り立っているという、これまでの句題和歌とは異なる方向性を有することを指摘した。学会発表は和歌文学会例会において、「『内裏名所百首』組題の方法」(平成17年12月17日於東京成徳短期大学)を口頭発表した。本発表は、中世から近世にかけて、名所詠の規範として重視された『題詠名所百首』について、その組題がどのような意識でなされているかを検討したものである。それ以前の名所詠との違いを検討した上で、催行された時代における意義や問題の所在を明確にすることを試みた。また、京都大学文学研究科COEプログラム32研究班による京都大学国文学研究室中国文学研究室編『京都大学蔵実隆自筆 和漢聯句譯註』(臨川書店・平成18年2月)の刊行に携わり、第37句から第50句までの和句の訳注を担当した。本書は漢聯句の本格的な注釈書としては初めてのものである。なお、本年度は学位論文『新古今的表現の研究』を提出し、平成17年11月24日付で京都大学博士(文学)を取得した。
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Research Products
(3 results)