2006 Fiscal Year Annual Research Report
ナイジェリアの宗教共同体におけるオリシャ崇拝:大西洋を渡るアメリカ黒人の文化実践
Project/Area Number |
05J01040
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小池 郁子 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | オリシャ崇拝 / 託宣 / 黒人 / 身体的実践 / 間一大西洋 / ナイジェリア / アメリカ合衆国 / 文化人類学 |
Research Abstract |
本年度の研究(本研究)では、ナイジェリア南西部およびベニン共和国東部にひろがるヨルバランドの人々によって実践されてきた託宣が、新たな実践者であるアフリカ系アメリカ人(アメリカ黒人)のあいだでどのように発展してきたのかに着目しアメリカ黒人の文化実践を考察した。 本研究でとりあげる託宣システムは、1960年代前半アメリカ合衆国で公民権運動が高まっていく時代にニューヨークのハーレム地域周辺のハイチ人移民やキューバ人移民<これらの民族が各々実践する宗教、ヴドゥン・サンテリア>を介してオリシャ崇拝とともにアメリカ黒人共同体へと伝わった。本研究では、託宣システムの種類<オビ・メリィンディンログン・イファ>と技術知識、ならびに託宣に欠かすことのできない供犠儀礼について事例をもとに考察したうえで、宗教組織における託宣を次の点から検討した。すなわち、1)地域社会との接点:成員の勧誘、2)司祭と顧客との交渉からみる託宣の役割、3)成員による託宣結果の評価。 公民権運動が衰退した以降現在に至るまで、一部のアメリカ黒人共同体において、託宣は神々<オリシャ>とのコミュニケーション手段として、地域社会に宗教運動の存在を広く知らせしめその宗教運動の理解を求める手段として、また新たな崇拝者(宗教組織の成員)を獲得する手段として機能している。くわえて、託宣はアメリカ黒人の崇拝者(潜在的崇拝者)をヨルバランドへと送り、ナイジェリア人の司祭をアメリカへ迎えるという大西洋をまたぐ身体的な文化交渉を生みだしている。 本研究は、アメリカ黒人に特徴的であるとされてきた宗教-黒人教会諸派(キリスト教)やブラック・モスレム(イスラム教)-を対象とした研究では明らかにされてこなかったアメリカ黒人の個人的/集団的欲求、世界観について明らかにすることを試みた。また、ヴドゥン・サンテリアを脱カトリシズム化させ、ブラック・モスレムの流れをくんで発展したアメリカのオリシャ崇拝が、再びヨルバランドのオリシャ崇拝文化と錯綜することでどのように変遷しているのかを具体例とともに明らかにした。
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Research Products
(1 results)