2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J01100
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今田 絵里香 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 女学生 / エス / ロマンティックな友情 / 女性の高等教育 / ジェンダー / 女子校 / 少女雑誌 / エンパワーメント |
Research Abstract |
(1)少女雑誌『少女画報』の「薔薇の便り」という投稿欄を分析し、その投稿文に表象されている「エス」という女学生同士の親密な関係の全容を明らかにした。「エス」はアメリカにおいて19世紀末まで存在した「ロマンティックな友情」と類似した女性同士の親密な関係である。しかしながら、19世紀末のアメリカにおいては、女性の経済的自立が可能になったことから、女性たちが男性との婚姻関係を拒否し、女性同士の「ロマンティックな友清」を生涯維持するようになった。それとともに、「ロマンティックな友情」は脅威とみなされ、バッシングされたといわれている。ところが、近代日本においては女性の経済的自立が不可能であったため、「エス」の生涯維持は不可能であった。しかし、それゆえに「エス」は脅威とみなされず、ひそかに温存されたことが明らかになった。 (2)少女雑誌『少女の友』、『少女画報』においては1930年代、理想的な女性像として芸術家の出現頻度が非常に高いことがわかった。そのため、1930年代における芸術と女性との関係を確認することにした。宝塚少女歌劇の誕生とその勃興、映画女優の誕生、芸術系の女子高等教育機関の拡大要請など、女性の芸術家及び、芸術系教科の教員の養成が必要とされていたことを明らかにした。 (3)現在の女子高校生の意識を明らかにするため、高校卒業生の聞き取りと、大阪の私立高校を中心にアンケート調査をおこなった。その結果、ノン・エリート女子高校において、女子同士の親密な関係が存在すること、かつ、スクール・カラーとして語学などの「女性的」な能力を中心にしたエンパワーメントがおこなわれていること、この二つの要因から、自身のジェンダー・アイデンティティを肯定的に受けとめる意識を女子高校生たちが持っていることを明らかにした。
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