2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J01125
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 賢司 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 日本中世史 / 室町時代 / 室町幕府 / 守護 / 在京大名 |
Research Abstract |
初年度は、15世紀前半までの大名在京制の実態解明を試みる研究計画に基づき、在京大名・内衆を含めて検討を進め、京都に置かれた大名家家政機関の活動について考察した。すなわち、宮崎県総合博物館所蔵の「郡司文書」には、近年発刊された宮崎県編『宮崎県史 史料編 中世1』(1990年)に至るまで、年月日・差出人ともに不明とされてきた文書が存在する。「在京大名山名氏による医徳庵召還活動」では、これらのうちの7通の文書が、永享2年(1430)に在京大名山名氏が、将軍足利義教の命令を受けて発給したものであることを明らかにした。この文書群の検討を通して、在京大名の中には、補任されている守護分国の範疇を超えて幕命の下達を行う者がおり、大名=守護との認識では彼らの活動を総体的に把握できないことを主張した。さらに、在京大名に命じられた将軍の上意遂行の実務は、内衆によって担われていたことも指摘した。また、「書評 小谷利明著『畿内戦国期守護と地域社会』」において、畠山守護権力を議論の中心に据える小谷利明氏の著書の検討を通じて、自身の研究課題である室町幕府-守護体制の変質過程についての研究史整理を行った。いっぽう、「書評 清水克行著『室町社会の騒擾と秩序』」では、室町・戦国社会における法慣習の実態・変容を探求した清水克行氏の著書を批評し、おもに室町幕府の政治史分野で蓄積された研究成果を整理することで、社会史研究の分野における分析視角との接点や差異を確認した。さらに、15世紀後半段階の室町幕府の権力構造について解明する次年度の研究計画を見据えながら、当該期の将軍・管領・守護の発給文書を収集・分析した。この作業の成果は2005年9月に行われた第43回中世史サマーセミナーで報告し、その内容を学術論文で公表する準備を進めている。
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Research Products
(3 results)