2006 Fiscal Year Annual Research Report
思春期テナガザルの異性の歌に対する感受性-感覚性強化の認知実験-
Project/Area Number |
05J01163
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
打越 万喜子 京都大学, 霊長類研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | テナガザル / 発達 / 身体成長 / 行動発達 / 歌 / 性成熟 / 比較発達 / 類人猿 |
Research Abstract |
本研究では、小型類人猿テナガザルの思春期の発達特性を明らかにすることを目的にしている。テナガザルのデータをヒトやその他の霊長類の先行研究と比較することで、ヒトの思春期発達の進化的基盤をさぐる試みだ。対象は生後からの経過が明らかな、7歳と8歳のアジルテナガザル2雄で、その縦断的な発達を総合的に調べている。今年度の研究実施状況を以下に報告する。2個体の体重成長は、すでに歯の萌出が完了したものの、犬歯伸長や体重増加が続いた。テナガザルの7-8歳は依然として、成長期であるようだ。歯の萌出に関する基礎資料をGibbon Journalにて報告したが、これは今後の生活史の比較研究に役立つだろう。体重成長には、ヒトやゴリラ、チンパンジーの雄などで報告されるような顕著な思春期成長スパートは存在しないことが明らかになった。テナガザルの体重の成長ピークは生後0-2歳にあり、この成長曲線はマーモセットのものに似ていた。どちらも一夫一妻型の社会構造を持つもので、体重成長と社会構造との連関が示唆された。行動発達については、思春期に特有と思われる変化がいくつかあった。成体雄に特有な「キャウ」という金切り声の初出、性的アピール行動の日常化などである。また、テナガザルの成体は性ごとに異なるレパートリーを歌うのだが、こども期には両性のレパートリーを発声することが知られている。対象個体の6歳以降には雌のレパートリーが確認されずにいたが、今年度においてもそれは同様だった。歌における性分化が定着したようだ。歌の発達について詳細の分析を進めているが、現段階での知見を日本霊長類学会において発表した。認知実験については、写真への好みやカテゴリーの形成をチンパンジーと同様の課題で比較しようと試みている。実験とデータの分析を継続して行っている。上記のようなテナガザルの思春期の発達特性を、主に社会構造の観点から考察して、日本動物心理学会例会において発表した。
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Research Products
(2 results)