2005 Fiscal Year Annual Research Report
加齢にともなう表象の操作能力の変化と脳機能に関する実験的研究
Project/Area Number |
05J01164
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川合 南海子 京都大学, 霊長類研究所, 特別研究員
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Keywords | 加齢 / 表象の操作 / NIRS / 老齢ザル / 認知 |
Research Abstract |
記憶における加齢の特徴は、保持できる時間の短縮や容量の縮小に見いだされがちだが、空間的な情報の処理が加齢によってどのように影響されるのかは、まだ明らかではない。そこで本研究では、特にワーキングメモリ、なかでも複数の情報を統合的に利用することが可能かを検討した。刺激の手がかりが増えると、ワーキングメモリへの負荷は小さくなり記憶は容易になると考えられる。老齢ザルのワーキングメモリには、どのような手がかりが有効なのだろうか。たとえば、複数の手がかりが問題解決の情報として付加されたばあい、それらを統合して利用することができるのだろうか。そこで、刺激に付随する手がかりを操作した3つの課題を用いた。課題で設けられた条件は、刺激の空間的な近接性(刺激間の距離)と、奥行き情報,物体情報の有無であった。空間的に近くにあるものほど間違いやすい、この性質を基本に、奥行きと物体情報という2つの「手助け」となる手がかりを与えて、老齢ザルがそれをうまく利用できるかを検討した。その結果、刺激が空間的に近接していると若齢ザルでも記憶は困難であったが、「奥行き」という情報が付加されると若齢ザルの記憶は容易になった。一方で老齢ザルは、そのような空間的な手がかりを付加してもそれを効果的に活用できなかった。老齢ザルは、与えられた手がかりがいくつであろうが、それが抽象的なものであるならば、それを記憶能力として利用することはできないことが明らかになった。つまり、老齢ザルのワーキングメモリは、抽象的な情報を統合・利用することが特に困難であることが示唆された。
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Research Products
(1 results)