2007 Fiscal Year Annual Research Report
加齢にともなう表象の操作能力の変化と脳機能に関する実験的研究
Project/Area Number |
05J01164
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川合 南海子 Kyoto University, こころの未来研究センター, 助教
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Keywords | 加齢 / 注意 / NIRS / 認知方略 |
Research Abstract |
視覚的な注意の転換に関する検討には、ある合図を呈示した後で注意対象を呈示するPosner課題が用いられる。その際に、合図刺激の呈示時間が一定であると「注意の転換」ではなく「予期」によっても課題を遂行することが可能となる。また、合図刺激の呈示時間が長くなると「転換」をおこなっていてもそれが反応潜時には反映されにくい。そこで本研究では、「転換」「予期」のいずれの方略でも遂行できるような課題を設定し、反応潜時という行動データと脳血流量の変化という生理的データを照会することによって、被験者がとった認知方略の違いを検出することを目的とした。実験の結果、測定部位間での脳血流量変化に差があったことから、PETやfMRIによる先行研究と同様に、注意の転換には前頭葉よりも頭頂葉(特に右上部)が強く関連していることが確認できた。また、event-relatedデザインの手続きであっても、条件間での変化量の差異を検出できることが確認できた。反応潜時にみられた条件間での差の有無は、本課題における方略の違いを反映していると考えられる。すなわち、差のなかった群は「注意の転換」をおこなっており、差があった群は「予期」によって課題を遂行していた。脳血流量の変化にみられた群間での違いもまた、そのような方略の違いを反映していると考えられる。つまり、「注意の転換」をおこなった場合、合図刺激と注意対象の位置が不一致条件であっても潜時は延びず右頭頂上部の賦活がみられ、一方で、「予期」していた場合は不一致条件で潜時が長くなり右頭頂上部の賦活はみられない。このことから、反応潜時と脳血流の結果を照会することで、「注意の転換」か「予期」かという認知方略の違いを検出できることが示唆された。
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Research Products
(4 results)