2005 Fiscal Year Annual Research Report
単一高分子鎖における階層的構造転移の統計物理学的研究
Project/Area Number |
05J01263
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂上 貴洋 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 高分子の閉じ込め / DNAの電気泳動 / レオロジー / 高分子の折り畳み |
Research Abstract |
今年度は、主なテーマとして、「狭い空間に閉じ込められた高分子鎖」についての、理論的な研究を行った。よく知られているように、長い紐状分子である高分子鎖は、非常に柔らかな弾性を示し、その結果として、弱い外力に大きな応答を示し、また、非常に狭い空間に閉じ込めることも可能である。 この、「高分子鎖の閉じ込め」は、高分子物理学における古典的問題として従来から知られてきたが、顕微鏡による可視化技術や、また、微細加工技術の発展により、近年実験サイドから非常に盛んに研究が進めらており、その副産物として多くの理論的には未解決な課題が提出されている。本研究では、高分子の閉じ込めには、2つの定性的に異なる状態があることを指摘し、それぞれ、1:弱い閉じ込め(weak confinement)と2:強い閉じ込め(strong confinement)として区別することを提案した。それにより、従来の枠組みでは説明不可能であった現象の理解が可能となってきている。「高分子の閉じ込め」という概念は、産業上の応用はもちろんのこと、生物物理の様々な局面においても重要であり、今後、様々な「高分子の閉じ込め」に関する現象を統一的に捉える足場となることが期待される。 関連する話題として、デザインされた微小チャネル中でのDNAの電気泳動の問題も取り扱った。ここでは、閉じ込められたDNA分子が電場による外力下、どのような応答を示すかという問題を理論的に取り扱い、その結果として、電気泳動度の電場の強さ、また、DNAの鎖長依存性を計算し、報告されている実験データとの良い一致を得た。また、理論的に予想される新たな可能性について議論した。
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Research Products
(4 results)