2007 Fiscal Year Annual Research Report
単一高分子鎖における階層的構造転移の統計物理学的研究
Project/Area Number |
05J01263
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂上 貴洋 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 非平衡ダイナミクス / 一分子実験 / 高分子鎖 / 揺動散逸定理 |
Research Abstract |
今年度は、以下の3つの項目を重点的に研究した。 (1)高分子鎖の空間拘束:分子鎖の硬さの効果 前年度、(a)弱い閉じ込め,(b)強い閉じ込めの概念を導入することにより、空間拘束下の高分子鎖の振る舞いを統一的に取り扱う枠組みを導入した。この枠組みを、DNAなどの「半屈曲鎖」において重要となる分子鎖の硬さの効果をとりいれ一般化を行った。 (2)強い外場に対する高分子鎖の非平衡応答 分子量の大きな高分子鎖は、長い緩和時間を持ち、(スローダイナミクス)、比較的弱い外場に対して大きな変形、応答を示す。近年の一分子観察/操作の進展を視野に入れ、ここでは大きな力に応答する際の高分子鎖の非平衡ダイナミクスを記述する枠組みを構築した。特に、力が局所的に印加される場合には、これは高分子鎖の骨格に沿っての張力の伝播という形で定式化される。膜にあいたナノサイズの穴(nano pore)を通しての高分子鎖の輸送(polymer translocation)や、力学的操作による伸長のダイナミクスを解析した。 (3)揺らぎと非平衡物性 多成分の非平衡系における揺らぎと応答の関係を考察した。非平衡状態では、詳細釣合が成り立たず、その帰結として揺らぎの相関関数は時間並進対称性を失い、また、応答関数には非対称成分が顕在化する。これらの間になりたつ関係式を明らかにした。
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Research Products
(8 results)