2006 Fiscal Year Annual Research Report
顕著な内部構造を有する複雑液体における非平衡現象および相転移ダイナミクス
Project/Area Number |
05J01265
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古川 亮 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員
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Keywords | レオロジー / キャビテーション / シアバンド |
Research Abstract |
流体力学では、流れに伴う密度変化を無視できる、すなわち非圧縮性を仮定できる場合が多い。よく知られた例として、流れが圧力変化を伴わない単純剪断流がある。この場合には、粘性応力による体積変形がなく慣性効果も無視できる。したがって、単純剪断流については、密度揺らぎの増幅を伴う不安定化(キャビテーション、シアバンドなど)は起きないと考えられてきた。このことは、そもそも単純剪断(横モード)が、その字義通り体積変化、つまり密度揺らぎ(縦モード)を引き起こさない変形であることからも理解できよう。本研究では、このような、これまでの知見に反し、ずり粘性の密度依存性に起因する流れと密度揺らぎの結合を明確に考慮に入れることによって、単純剪断流であっても、非圧縮状態が破れうることを示した。ずり粘性の圧力微分の逆数によって与えられる臨界剪断率を超えると、液体の一様状態は力学的に不安定になり、遂にはキャビテーション、シアバンドなどに至ることを予測する。この予測は、流体力学の基本方程式であるNavier-Stokes方程式から自然に導かれるという、極めて単純かつ一般的なものでありながら、これまでの流体力学研究で歴史的に見落とされてきた。本研究の結果から、非常に粘性の高い液体では、この剪断誘起不安定性が実験的に容易に実現しうる程度の剪断率でも起こると予測される。実際、高粘性の潤滑剤において観察された異常な剪断誘起不安定性を、今回の結果により説明できる。 単純剪断によっても密度の均一な状態が実際に不安定化することを確認し、さらには非線形領域における動的な性質を調べるため、モデル流体(ファンデルワールス流体)を用いた計算機シミュレーションを併せて行った。そこで得られた結果は、我々の理論予測を強く支持するだけでなく、顕著な非ニュートン性(シア-シンニング)の発現などの興味深い非線形効果をも見出す。これらは、近年報告されている低分子潤滑油におけるずり誘起のキャビテーション現象のレオロジー的観測とよく一致する。
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Research Products
(1 results)