2005 Fiscal Year Annual Research Report
カチオンプール法及びカチオンフロー法を用いる革新的有機合成反応の開発
Project/Area Number |
05J01320
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 祥正 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 有機電解合成 / 炭素-炭素結合形成反応 / 低温陽極酸化 / シリルカチオン / スズカチオン |
Research Abstract |
有機電解合成反応では、反応基質を含む溶媒中に電流を流すことにより、陽極では酸化反応が進行してカチオン種が生成し、陰極では還元反応が進行してアニオン種が生成する。この場合、酸化還元反応は電子の移動によって起こるため、有害で取り扱いに注意を要する重金属酸化剤や金属還元剤を用いる必要がない。しかしながら、これまでに報告されている有機電解合成反応のほとんどは陽極もしくは陰極のみの電子移動を利用した反応であり、対極の電子は無駄に使われている。本研究の目的は、陽極で発生するカチオン種と陰極で発生するアニオン種を一時的に蓄えた後、カップリングさせることにより、新たな炭素-炭素結合を形成する高電子効率的環境調和型炭素-炭素結合形成反応を開拓することである。 本研究では、まず2-pyridylvinylsilane類やpentafluorophenyl bromideの陰極還元による炭素アニオンの発生と蓄積について種々検討した。しかしながら、これらの反応では複雑な反応混合物が得られ、炭素アニオンを安定に蓄えることはできなかった。 次に、ジシランの陽極酸化により発生する不安定なシリルカチオンの分子間配位による安定化について検討した。ケトン存在下にてジシランの低温陽極酸化を行ったところ、副生成物が混在しているがCSI-MSにてシリルカチオンがケトンと相互作用することにより安定化されて蓄えられていることが明らかとなった。また、ジシランの代わりにジスタナンを用いた場合では、スズカチオンを安定に蓄えることが可能であり、さらに、発生したスズカチオンの溶液に様々なカルボニル化合物を添加することにより、スズカチオンがカルボニル化合物と相互作用することが明らかとなった。現在、これらのカチオン種を利用した有機合成反応について検討中である。
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