2005 Fiscal Year Annual Research Report
植食性昆虫のミトコンドリアDNA多型情報にもとづく照葉樹林の分子植物地理学的研究
Project/Area Number |
05J01416
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
青木 京子 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 植物地理 / 照葉樹林 / レフュジア / 植食性昆虫 / 種内の遺伝的変異 |
Research Abstract |
研究の目的は,分子進化速度の大きく異なる植物cpDNAと動物mtDNAの多型情報を重ね合わせることで照葉樹林の日本列島内での動きを幅広い時間軸で詳細に考察することである。シイ林に生活する複数の植食性昆虫におけるmtDNA多型の地理的分布パターンの共通点を探し出すことで,これまで植物のデータから示された氷期における2大レフュジア(逃避地)からの分布拡大の傾向,経路を考察する。 平成17年度に行った研究および得られた成果は以下である。 1.シイに付く昆虫2種におけるmtDNA多型の地理的分布パターンの共通点の探索 シイに付く植食性昆虫(シギゾウムシ,ヒラセノミゾウムシ)について,日本におけるシイの分布域をカバーするように複数の産地から材料を採集し,mtDNA多型を解析し,その地理的分布パターンを得た。その結果,どちらの種もシイ林に生育する植物で得られた結果(九州と紀伊半島に2大レフュジアがあった)を指示するパターンとなった。また,両種ともに中国四国地域を境に遺伝的まとまりがあることがわかった。種ごとの特徴としては,シギゾウムシでは九州南部から日本海周りと太平洋周りの2ルートでの拡大経路が検出でき,一方ヒラセノミゾウムシでは関東地方にも遺伝的に独特なまとまりが検出された。 2.ホスト植物シイのDNA多型の地理的分布パターンの解析 日本のシイ林1地点から約20個体のシイの葉を採集し,最近開発されたシイのマイクロサテライト領域を使って,その多型の地理的分布パターンを現在解析中である。パターンが得られた後は,上記のシイに付く植食性昆虫2種のmtDNA多型の地理的分布パターンと比較する。 3.国際学会で発表 これらの成果をオーストリアで開かれた国際植物科学会議で発表した。
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