2005 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア大陸山地部におけるランドスケープモデリングを用いた土地利用のリスク評価
Project/Area Number |
05J01451
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
富田 晋介 京都大学, 東南アジア研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | ラオス / 土地利用 / 人口 |
Research Abstract |
自給自足的な農業生産を生活基盤とする社会において、人口は資源利用や経営形態を規定する最大の要因である。また過去数十年間の東南アジア大陸山地部を考えた場合、社会秩序の回復、食糧事情の改善や公衆衛生サービスの充実により、人口が増加してきたことも疑い得ない。このような前提から、今日見られる環境劣化の最大の要因を人口増加に求めようとする議論が導かれている。しかし、人口の変動を規定しているものは何か、人口の変動が環境をどのように改変したのかに関する実証的な研究は極めてまれである。そこで研究では、ラオス北部のウドムサイ県の一村落を対象として、過去50年間の人口変動を再現した上で、その要因と水田開拓に与えた影響について考察した。 人口は、1960年代後半から急激に増加したが、1990年後半以降は停滞傾向にある。これは、自然増加率が、1985年までは年率2〜3%と高い水準で推移した後、急激に減少したからである。自然増加率の変動をみると、人口動態は、内戦による混乱期、村落に接する河川の大洪水、第3次インドシナ戦争による混乱期などの社会状況に敏感に反応していた。また、この村の事例では、自然増加率の減少は、道路、保健所、水道などの政府による社会インフラの整備や海外援助による衛生環境の改善が実施される以前から始まっていた。よって、地域の治安や秩序の回復が人口安定の要因であると考えられる。また、農地拡大の要因は、これまでのような人口増加に代表される内発的なものから、市場経済化のような外発的なものへと移行しつつあることが示唆された。
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