2006 Fiscal Year Annual Research Report
3栄養段階の食物連鎖系における物質転流に対して植食性昆虫が果たす役割
Project/Area Number |
05J01462
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加賀田 秀樹 京都大学, 生態学研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 間接効果 / 生態化学量論 / C : N比 / 食物連鎖 / 昆虫群衆 / ヤナギ / 栄養カスケード / 物質転流 |
Research Abstract |
野洲川河川敷に自製するジャヤナギ上に形成される群集構造に関して、食物連鎖の基板となるヤナギの葉の炭素:窒素比(CN比)を人工的に変化させた時に、そこに形成される節足動物群集の構造やCN比がどのように変化するのか調べた。ヤナギの葉のCN比の操作は、前年の冬に主幹を伐採しそこから萌芽枝を形成させることでおこなった。萌芽枝から生じる葉は通常の葉に比べて高い窒素含有率をもつことが予備実験からわかっている。ヤナギの伐採の結果、ヤナギの葉のCN比は23.5から18.0に減少し、これは一般に植食性昆虫にとっては餌の質が改善されたことを意味する。実際7目25科57種の節足動物がヤナギ上で観察され、バイオマスにしてその約80%が伐採されたヤナギ上で観察された。しかし、種数では伐採ヤナギと非伐採ヤナギとの間では有意な差は検出できなかった。また、採集された節足動物のCN比も両者間で差はなかった。資源-消費者の関係におけるバイオマスとCN比の関係を明らかにするため、回帰分析をおこなったところ、植食者のバイオマスはヤナギのCN比によって説明され、捕食者のバイオマスは植食者のCN比ではなくバイオマスによって説明することができた。コレラの結果より、1)植物連鎖の起点となる植物のCN比が変化したとしても、それを利用する節足動物群集のCN比はここの種の恒常性のために影響をうけない。2)植物-植食者-捕食者からなる3栄養段階における資源の影響の伝わり方は、植物-植食者間では資源の質(CN比)が重要である一方、植食者-捕食者間では資源の量(バイオマス)が重要である、ということが結論づけられた。 本研究の成果により、従来は食物連鎖における物質の転換高率はバイオマスという1次元的な量的指標によって計測され評価去れてきたが、それに加えてCN比という質的な指標を加える事でよく理解できることが示された。
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Research Products
(1 results)