2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J01483
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
酒井 あすか (阿尾 あすか) 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 後期京極派和歌 / 花園院 / 光厳院 / 宋詩 / 禅宗 / 『風雅和歌集』 / 隠遁志向 / 和歌観 |
Research Abstract |
本年度の実績としては、最初に、昨年度の成果に基づき新たな知見を加えた「炊煙の歌-『風雅和歌集』雑中を中心として」(『文学』第六巻第四号、平成17年、7・8月号)が挙げられる。本稿は平成16年和歌文学会関西四月例会(於八坂神社)における口頭発表をもとに大幅に改稿したもので、『風雅和歌集』雑中巻に見られる、炊事の煙を詠んだ歌が隠遁を志向するものであり、それは宋代の詩、詩論を通じて陶淵明詩の表現を摂取したことに拠ること、またそのような現象が見られた背景には『風雅和歌集』企画監修者である花園院の禅宗への傾倒があり、禅僧周辺の文物を通じて宋詩や陶淵明の享受があったと考えられることを明らかにした。後期京極派歌壇の中心的指導者であった花園院の和歌観と、宋詩、禅宗がどのように関わっていくのかについてはこれからも解明されねばならない問題である。平成17年度京都大学国文学会(11月12日、於京大会館)での口頭発表、「花園院と詩話風雅和歌集の真名、仮名序を中心に」では、花園院起草の『風雅和歌集』真名序、仮名序を端緒に、同院の和歌観を読み取り、宋代詩論との関わりを具体的に検討した。当発表では、花園院の和歌観が前期京極派の指導者である京極為兼のそれとは多少の異なりを持っており、宋代の詩論を集めた『詩人玉屑』が伝来し同院がその影響を受けて自らの歌論を修正補強している可能性が高いことを指摘した。そのようにして築かれた花園院の和歌観は、愛甥である光厳院に引き継がれ実際に和歌に反映されている。このことについては、「「力あり」ということ『光厳院三十六番歌合』判詞をめぐって」(『京都大学 國文学論叢』第十五号、平成18年3月刊行予定)において指摘し得た。当稿では、『風雅和歌集』撰集後、光厳院主催の『光厳院三十六番歌合』において特徴的な評語「力あり」が、従来の雄勁な歌に対する使用とは異なって、風格ある詠いぶり、格調高さに対して用いられていることが見受けられること、それは光厳院が花園院の和歌観を忠実に継承した表れであることを論じた上で、花園院の和歌観に和歌の正風である『古今和歌集』尊重の意識があることも明らかにし得た。今後は、花園院が漢籍の知識と伝統的和歌思想とをどのように融和させ、自身の歌論になし得たかを考
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Research Products
(2 results)