2006 Fiscal Year Annual Research Report
中世後期ヴェネツィア領クレタの形成におけるギリシア文化と正教会
Project/Area Number |
05J01501
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高田 良太 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 西洋中世史 / ヴェネツィア / 民事裁判 / 遺言書 / アイデンティティ / ビザンツ / エーゲ海 / 社会史 |
Research Abstract |
すべての共同体は固有の歴史を持っており,それゆえに紛争と裁判形態に着目して地域の形成・創造の過程をたどることは歴史学者にとってきわめて魅力ある作業である.本年度はとりわけ複数の法的領域の境目にある地域(ブリウリ地方とクレタ島)に着目して,研究に従事した. フリウリ地方はヴェネツィアとオーストリア,スラブ世界という異なる法的枠組みを持つ地域に囲まれており,その紛争の事例は法的に辺境にある世界での紛争解決について知るうえで示唆的である.その代表的な論文を本年度は翻訳・出版した〔F・ビアンコ(拙訳)「復讐するは我にあり-15・16世紀フリウリのフェーデにおける貴族クランと農村共同体-」服部良久編訳『紛争のなかのヨーロッパ』京都大学学術出版会,2006年,181-114頁〕.紛争の性質の変化のなかに政治的環境・社会構造・エリート層の意識など社会を支える枠組みそのものの変化を読み込むビアンコ論文の姿勢は他地域の地域社会について研究するうえでも指針となるものである. また、かつてヴェネツィアの海外領土であったクレタ島の中近世史を専門的に研究するために,平成18年7月31日から同年10月24日にかけて,また同年11月9日から平成19年3月31日にかけてヴェネツィアのギリシア文化研究所にて調査・研究活動に従事した.この期間の成7果として,まず14世紀なかばの対ヴェネツィア反乱前後島内の社会の権力構造を解明した.あわせて,14世紀から15世紀にかけての民事訴訟記録を調査し,法にもとついて共同体的秩序が形成される過程を明らかにした.以上の調査にもとついて課程博士論文の準備をすすめた.その一環として学習院大学の亀長洋子助教授と共同で中近世イタリア都市の海外領土についての研究をすすめた(特別研究員はヴェネツィアの海外領土にかかわる部分を担当した)〔亀長洋子・高田良太「海のかなたのイタリア-イタリア都市の海外領土-」齊藤寛海・山辺規子・藤内哲也編著『イタリア都市社会史入門』昭和堂,2007年(刊行予定)〕.
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Research Products
(1 results)