2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J01503
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東村 純子 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 紡織 / 織物 / 機 / 古墳時代 / 律令時代 / 考古学 / 分業 / 手工業 |
Research Abstract |
古墳時代中期から律令時代における紡織(織物生産)の歴史的展開を明らかにするため、全国各地の遺跡から出土する紡織具について、考古学の手法による分析を試みた。 1、律令制下の紡織について-糸を巻く道具(〓・綛かけ・糸枠)や機部材の形態的特徴、紡織具の組成変化、出土遺跡の性格を検討し、宮都・地方官衙(国衙・郡衙)・集落の各レベルでの紡織体制について考察を進めた。なかでも、宮都や地方官衙の一部では綛(糸)を貢納や交易によって入手し、製織のみを行っていたこと、すなわち製糸と製織を分業する体制が確立していた事実について、その研究成果を公表した。 2、古墳時代後期から律令国家形成期の紡織について-〓や鉄製紡錘車などの紡織具の形態的特徴、出土遺跡の性格を検討し、郡衙の前身ともなる豪族の本拠地での紡織活動について考察を進めた。なかでも、豪族による麻の紡織活動を国家規模での貢納を前提とする紡織体制の端緒と評価し、その研究成果を公表した。 3、古墳時代中期から後期の紡織について-古墳時代中期に新しく出現する、地機・高機や糸枠などの紡織具を分析し、考察を進めた。構造部材をもつ高機・地機は、律令時代では宮都・地方官衙で利用される。その一方、弥生時代にみられる構造部材をもたない機(原始機)が、古墳時代にも存在することが明らかになってきた。それは古墳時代から律令時代の集落における織物生産の実態を探る手がかりとなるだろう。原始機の復元・使用方法については、近隣諸国の民族例との比較検討など、さらに調査する必要がある。 以上、新たな課題も出てきたが、遺跡から出土した紡錘車・〓・綛かけ・糸枠・機をはじめとする紡織具の考古学的分析によって、古墳時代中期から律令時代の紡織技術、政治構造に対応した紡織体制についての研究を進めることができた。
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Research Products
(2 results)