2006 Fiscal Year Annual Research Report
生態学的場面における種特異的な推論進化モデルの構築
Project/Area Number |
05J01507
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 真 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 推論 / 比較認知 / ニホンザル |
Research Abstract |
動物が生活する環境の情報は必ずしも完全なものが得られるとは限らない。断片的な情報を推論により統合できるならば、推論能力は非常に広範な種に存在する可能性がある。しかし、その能力が万能であることはその維持にコストがかかるため、特定の文脈に対して特化したほうが適応的であるかもしれない。近年の研究から、ヒトの推論はいかなる文脈においても同じように働くものではなく、課題の文脈に影響を受ける領域固有な能力である可能性を示されているが、ヒト以外の動物の推論研究において、こうした可能性はあまり検討されていない。そこで、文脈の違いが推論に影響及ぼすかどうかを調べるため、構造の類似した非社会的文脈と社会的文脈の推論課題をニホンザルに提示して、その成績を比較した。また、推論能力と発達、社会的地位、および、生活環境との関連を調べるため、個体の年齢、社会的順位、所属する集団と推論課題の成績も分析した。非社会的文脈の課題は以下のような課題である。まず、動物に1つの食べ物を見せ、動物に分からないように、2つの入れ物の内、1つに餌を入れ、どちらか一方の入れ物の中身を動物にみせる。このとき、どちらの入れ物を選択するかをテストする。社会的文脈の課題は以下のような課題である。まず、2つの入れ物それぞれに1つずつ餌が入るのを動物に見せる。どちらか一方の餌を他個体が取ったのを見たとき、どちらの入れ物を選択するかをテストする。この2つの課題の成績、年齢、順位、集団、それぞれを分析した。その結果、ニホンザルはどちらの課題も解決することができた。また、推論課題の成績と文脈に有意な差はなかった。文脈と同様に、個体の年齢、社会的順位、所属する集団に有意な関係はなかった。この結果は、文脈や個体の特性がニホンザルの推論能力に影響を与えていない可能性を示すが、さらなる研究が必要である。
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