2005 Fiscal Year Annual Research Report
生態学的場面における種特異的な推論進化モデルの構築
Project/Area Number |
05J01507
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 真 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 推論 / フサオマキザル / ツパイ / ラット / ハムスター / 社会的文脈 / 比較認知 |
Research Abstract |
動物が生活する場面で、他個体から情報を得ることが重要である。他個体からの情報は、直接他個体が当該個体に向けて情報を発している場合と他個体が意図して発していない情報を、当該個体が自己の知識と他個体の行動を照らし合わせし、環境情報を推論する必要がある場合の両方がある。本研究では後者の場合の推論を、社会性の高いフサオマキザル、集団で生活しないツパイとハムスター、集団で生活するラットが行えるかどうかを比較検討した。本研究では以下のような場面を模した。当該個体にとって既知な2箇所の餌場がある。その個体が餌場に行く前に、同種他個体が一方の餌場に行くのを見る。このとき、他個体の選択した餌場には餌がないことを推論するならば、他個体が選択していない餌場に行くはずである。 その結果、フサオマキザルは他個体の選択していない餌場に行くことができた。ツパイ、ハムスターは他個体が行った餌場、行かなかった餌場両方とも同じ頻度で選択していた。一方、ラットは他個体の選択した餌場と同じ餌場を選択していた。こうした結果は、フサオマキザルは同種他個体が意図して発していない情報を利用して環境情報を推論できるが、それ以外の3種はそれができないことを示唆する。さらに、ラットは同種他個体に対して注意を払うが、ツパイ、ハムスターは同種他個体の行動に無関心であることを示唆する。これらの結果は、各種の社会と照らし合わせたとき、妥当な結果といえる。すなわち、本研究で用いたような場面で推論を行うには、単に集団で生活することや、ヒトに系統発生学的に近いという要因が単独で影響を与えているのではなく、両者の要因が必要であることを示唆する。
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