Research Abstract |
本研究課題の目的は,物語理解における主人公の感情,読者の感情,主天公と読者の相互作用から生じる感情といった,それぞれの感情情報の処理過程を検討することであった.研究1では.読者が物語を理解する際に生起した感情を,連想法を用いて検討した.一文ごとに感情連想語を収集し,感情語の連想頻度と物語の展開に基づいて対応分析を行った.研究2では,主人公の感情が物語の中で変化した場合に,読者が感情変化を検出する過程を検討した.さらに,読者の自我関与が,状況モデル構築にいかに作用するかについても検討した.研究2の成果は,Memory & Cognition誌に掲載された(Komeda, H., & Kusumi, T.(2006)The effect of a protagonist's emotional shift on situation model construction. Memory & Cognition, 34,1548-1556.).研究3では,読者の感情の役割,特に共感,予感が物語理解に及ぼす効果を,既存の小説を用いて検討した.研究4では,物語理解における主人公と読者の感情過程を解明する統合的な実験として,主人公の感情状態の推論課題と,読者自身の感情評価を分離する課題を用いて,主人公と読者の相互作用という観点から検討を行った.研究4の成果は,Cognition and Emotion誌に投稿し,受理されるために改稿を進めている(Komeda, H., Kawasaki, M., Tsunemi, K., & Kusumi, T.(投稿中).The differences between estimating Protagonists' and evaluating readers' emotion in narrative comprehension).さらに,物語理解過程における読者の感情を組み込んだモデルを提示した展望論文「物語理解における感情過程:読者-主人公相互作用による状況モデル構築」が,心理学評論誌に受理された.
|