2005 Fiscal Year Annual Research Report
ベルクソン哲学の音楽美学的研究-20世紀作曲理論と演奏論の二つの側面から-
Project/Area Number |
05J01558
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古賀 純子 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | ベルクリン / ジョン・ケージ / オリヴィエ・メシアン / リズム / 不確定性 / 作曲理論 / 現代音楽 / 演奏論 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ベルクソン哲学を音楽との関わりにおいて考察することである。これまでに(1)20世紀の作曲理論をベルクソン哲学の観点から解釈すること、(2)ベルクソンの哲学理論を演奏という具体的な芸術活動の場に置きなおす、という二つの方向で研究を行ってきた。2005年度は、20世紀作曲理論の考察を中心に研究を進め、その成果を「芸術的創造における不確定性について-ベルクソン哲学とジョン・ケージ」という論文にまとめ、2006年3月4日、美学回西部会第257回例会にて口頭発表を行った。 この研究では、アンリ・ベルクソン(1859-1941)と作曲家ジョン・ケージ(1912-1992)の不確定性の思想を比較した。時間を予見不可能なプロセスととらえる両者にとって、芸術的創造行為における不確定性概念は重要な意味を持つ。ケージが作曲技法に不確定性を導入した目的は、作曲者・演奏者の「主体的な選択行為」を排除することと、伝統的な技法や知覚行為における記憶からの影響など、過去を断ち切るという二つの点にあった。そうすることによって、音楽的時間を知的な計画性から解放された自由なプロセスへと近づけようとしたのである。これに対し、ベルクソンの不確定性概念は、まさに創造者の主体的選択および記憶の連続性の肯定によって成立している。ケージの不確定性の作曲技法は、ベルクソン哲学に照らし合わせると、創造性とはかけ離れたものになってしまうのである。本研究では、ケージの不確定性概念をベルクソンの時間論、知覚理論、進化論と照らし合わせながら考察することによって、ベルクソン哲学における「不確定性」概念の特殊性を浮かび上がらせた。
|