2005 Fiscal Year Annual Research Report
広帯域テラヘルツ時間領域分光を用いた量子常誘電体・強誘電体混晶系の研究
Project/Area Number |
05J01611
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
市川 雄貴 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 量子常誘電体 / テラヘルツ時間領域分光 / ソフトモード / 不純物 |
Research Abstract |
量子常誘電体タンタル酸カリウムは極低温においても高い誘電率を保ちながら常誘電相でありつづけるが、わずかな不純物によって静的誘電率の温度依存性にピークが現れる。この現象の起源を明らかにするために、強誘電ソフトモードと静的誘電率を同時に観測できるテラヘルツ時間領域分光を主とした実験を行い、研究を進めてきた。 既設のテラヘルツ装置を改良し、半導体の交換、アンテナの導入等求める周波数帯域に応じてテラヘルツ波発生素子の交換が簡便な光整流によるテラヘルツ波発生の配置に変更し、半導体冷却用の窒素クライオスタットを作成した。同じ装置の中に入射角45度の反射配置のセットアップを加え、低温での反射型テラヘルツ時間領域分光を可能にした。 装置の改良と並行し、タンタル酸カリウムにNbを不純物として混入した試料、Liを混入した試料を作成し、低温でのテラヘルツ時間領域分光を行った。これらの結果と交流インピーダンス測定による低周波誘電率測定の結果とを比較することで、ABO3型ペロフスカイト構造を持つタンタル酸カリウムは、Bサイトに入るNbをドープすると、最低光学フォノンのソフト化がより進行し、静的誘電率の温度変化に現れるピークはフォノンの分極率に由来することがわかった。一方でAサイトに入るLiをドープすると、ソフトモードはハード化し、静的誘電率のピークの起源はソフトモード分極ではないことがわかった。これらの結果を国際学会において発表し(IQEC/CLEO-PR 2005、TeraTech'05)、議論した。 年度の後半では、低温で直流電場下でのテラヘルツ時間領域分光を行うべくクライオスタットを改造し、電場下冷却をしたLiドープタンタル酸カリウムのソフトモード誘電分散をテラヘルツ時間領域分光によって調べた。直流電場の方向とテラヘルツ波の偏光が平行な場合と垂直な場合とでテラヘルツ波の誘電率が異なることを発見し、また冷却過程によっても低温での誘電率が異なることを発見した。これらの結果はLiドープタンタル酸カリウムが転移温度以下でダイポールグラスを形成するという説を裏付けると同時に低温で生成されたダイポールクラスターには異方性があるということを示していると考えられる。 これらの結果を日本物理学会第61回年次大会において口頭発表し、議論した。
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