2006 Fiscal Year Annual Research Report
核磁気共鳴を用いた遍歴電子系酸化物の磁気ゆらぎ・磁気量子臨界現象の研究
Project/Area Number |
05J01615
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北川 健太郎 京都大学, 国際融合創造センター, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 量子臨界点 / Sr3Ru2O7 / ルテニウム酸化物 / NMR |
Research Abstract |
本研究では、絶対零度でおこる相転移である量子相転移、およびその近傍にある量子臨界領域での振る舞いを明らかにすることを目的としている。ペロブスカイト型ルテニウム遍歴酸化物Sr3Ru207は、そのメタ磁性1次転移の臨界点を絶対零度に調節することが可能であり、メタ磁性量子臨界点が実現する。18年度は、量子臨界点と古典臨界点の違い、およびSr3Ru207の遍歴メタ磁性の特色について議論した。 学会誌等への発表1において、古典的な1次転移臨界点が存在する磁場印加方向である、RuO2面に平行な磁場方向で170-NMR(核磁気共鳴)実験を発表した。前年度の量子臨界点近傍の結果との比較では、磁気ゆらぎの温度依存性に明確な違いが見られた。両者のメタ磁性において、古典臨界点ではフェルミ液体的である一方、メタ磁性量子臨界点では絶対零度に向かって磁気ゆらぎが発散していく様子が観測されている。 次に、学会誌等への発表3において、170-NMRのナイトシフトと電場四重極勾配の異方性から酸素2pπ軌道における局所スピン磁化率と局所ホール占有率を決定した。これらの値はRu-O結合の非イオン結合性(共有結合性)の強さを反映して、非常に大きな値になっていることが判明した。また、類似物質(Sr2RuO4,SrRuO3)との比較から、ペロブスカイト型ルテニウム遍歴酸化物における遍歴磁性の多様性に酸素軌道の共有結合性が非常に深くかかわっている可能性を議論し、発表した。本研究では、Sr3Ru207のメタ磁性における量子臨界現象を170-NMRを用いて研究し、1)量子臨界的な磁気ゆらぎの温度依存性をメタ磁性臨界点で初めて観測し、2)この系の遍歴磁性の発現に、微視的には酸素2pπ軌道の役割が大きいことを見出した。 また本研究では、強相関系のNMRに適したNMR装置を構築した。特徴は、構成の柔軟性が大きく、きわめて短い繰り返し間隔に耐え(1ms)、デッドタイムが小さく、感度が非常によい(NF=0.3dB)ことである。この成果は出身研究室の他の研究課題にも反映される予定である。 本研究の成果は、学位論文にまとめられている。
|
Research Products
(3 results)