2005 Fiscal Year Annual Research Report
1分子鎖観測によるDNA高次構造相転移と遺伝子活性のスイッチング
Project/Area Number |
05J01620
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中井 唱 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | DNA / 高次構造 / クロマチン / 遺伝子活性 / 高分子鎖 / 1分子観測 / 蛍光顕微鏡 / 原子間力顕微鏡 |
Research Abstract |
(1)再構成クロマチンにおいて、ヒストンの電荷を変化させて、ヌクレオソーム間相互作用の変化を調べた。ヌクレオソームは正電荷を持つヒストンタンパクに負電荷を持つDNAが巻きついた構造をとっており、その相互作用は溶液環境に敏感に変化し、複雑である。再構成クロマチンでヒストンをトリプシン処理して正電荷を持つテールを除去したもので、ヌクレオソーム間の相互作用ポテンシャルを原子間力顕微鏡(AFM)画像から導出した。ヒストンテールを除去した場合、ヌクレオソーム間の引力は1kBTから0.5kBTに減少することが分かった。この方法は、散乱実験などでは測定しにくいような場合にも有用であることが分かった。(2)DNA1分子鎖における凝縮転移と転写反応の関係を明らかにした。1分子内に1つだけ転写領域を持つDNA(Lambda ZAP II:全長41キロ塩基対)を用いて蛍光顕微鏡・AFM観察を行った結果、転写反応はDNAの不連続(急激)な凝縮転移によって完全に阻害されることが分かった。一方、DNAが広がった状態では、60%の割合で転写が行われていた。転写部位の詳細をAFMで観察すると、生成されたRNAが転写領域に数多く結合しているのが見られた。急激な構造転移は数十キロ塩基対以上のDNAに特有な性質であり、これによりゲノムの大域的な遺伝子のON/OFFスイッチングが行われていると考えられる。(3)巨大DNAのトポロジーと分子全体のサイズに関して新たな知見を見出した。これまではごく短い、フレキシブルな高分子鎖についての結果のみで、環状のものの流体力学的半径は直鎖状のものよりも小さいとされてきた。100キロ塩基対(約35マイクロメートル)の環状DNAの流体力学的半径を、蛍光顕微鏡を用いた1分子鎖観測により測定し、同じDNAを直鎖状にしたものよりも25%大きいことを明らかにした。
|
Research Products
(2 results)