2006 Fiscal Year Annual Research Report
1分子鎖観測によるDNA高次構造相転移と遺伝子活性のスイッチング
Project/Area Number |
05J01620
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中井 唱 京都大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | DNA / クロマチン / ヒストン / 高次構浩転移 / 高分子物理 / 1分子観測 |
Research Abstract |
ヌクレオソームにおいて高塩濃度でDNAがヒスドンから解離する現象のメカニズムを、実験と理論の両面から解明した。塩化ナトリウム濃度の増加に伴いDNAがピストンから外れるが、0.3M付近から解離が始まり、0.75Mではほぼ全てのピストンが解離状態にあることをAFM観察により明らかにした。また0.7M塩化ナトリウム存在下では温度上昇によりヌクレオソーム数が増加することを見出した。これは、DNAとピストンがヌクレオソームを形成している方が溶液中の小イオンも含めた系のエントロピーが大きい事を示しており、理論計算による検証を行なった。 凝縮剤の価数を変化させた時のDNA凝縮転移様式や凝縮構造の違いについて蛍光顕微鏡を用いた分子観測実験を行なった。3、5、9量体のpoly-L-lysineではDNAは広がったランダムコイル状態からコンパクトな状態に凝縮する際に、2状態の共存状態を経る不連続転移を示すが、92、981量体では共存状態は見られず、DNAのサイズが徐々に減少する緩慢転移で、構造は3,5、9量体で見られるものよりやや膨潤した構造であった。また、価数が小さいときは価数が1増加することに転移に要するlysineのモノマー量が1ケタずつ減少していくが、92、981量体ではDNAのリン酸基と等しいlysineのモノマー量で凝縮が起こる。このように、lysineの重合度に応じて2種類の凝縮様式があることを明らかにした。この内容は、Biomacromolecules誌に公表されている。また、大学院での研究成果を学位申請論文にまとめ、3月に博士(理学)の学位を取得した。
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