2006 Fiscal Year Annual Research Report
全天探査用広視野MeVガンマ線カメラの開発及び気球観測による天体観測実証試験
Project/Area Number |
05J01635
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高田 淳史 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | MeVガンマ線天文学 / コンプトンカメラ / 気球実験 / 宇宙拡散ガンマ線 / 大気ガンマ線 |
Research Abstract |
気球搭載用に開発を進めてきた電子飛跡検出型コンプトンカメラを完成させ、地上にて密封放射線源を用いて校正試験を行った。また、宇宙科学研究本部の大気球グループ所有の真空恒温槽を用いて熱試験を行い、気球高度での気圧・温度を再現し、長時間にわたってシステムが安定に動作することを確認した。さらに、気球の放球後は無線通信により、システムをコントロールする必要があるためシステムに通信モジュールを組み込み、実際に通信に使われるアンテナや変調器を用いて情報のやり取りができることも確認した。これら、気球実験に向けた準備は滞りなく行うことができ、2006年9月1日、三陸大気球観測センターから100,000m^3の気球に載せ、宇宙拡散・大気ガンマ線を測定する気球実験が行われた。気球は放球後約3時間後に高度35kmに達し、その後約4時間にわたって32〜35kmの水平飛行を実現した。実験中、システムは非常に安定に動作しており、トラブルは一切起きなかった。実験終了後は、コンプトンカメラを含むシステムは気球から切り離され、釜石沖に着水し無事に回収することができた。回収されたシステムからは実験中の全てのデータを取り出せ、またカメラの動作も放球前と変わらないことが確認できた。回収したデータは、放球前に行った校正試験の結果を用いて解析を行った。この解析より、全7時間の気球実験で、約1000個の事象がガンマ線として再構成でき、うち視野内の物は450事象あった。水平飛行中の事象に限ると、3時間の有効測定時間で視野内には200事象が存在し、これはシミュレーションで期待されるガンマ線の数と非常によく一致した。さらに得られたガンマ線フラックスの天頂角依存性は、過去の様々な実験から求められた経験式と誤差の範囲で一致した。また、気球の高度変化を利用し、残留大気量に対するガンマ線レートの変化からガンマ線フラックスを宇宙由来の成分と大気由来の成分とに分離し、それぞれに過去に得られているフラックスと比較したところ、誤差の範囲で一致することが確認できた。このように、開発したコンプトンカメラは広視野・高いSN比を気球高度で実証することに成功した。
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Research Products
(1 results)