2005 Fiscal Year Annual Research Report
ブレーン宇宙論における摂動の進化と観測に対する予言
Project/Area Number |
05J01642
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 努 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 宇宙論 / ブレーンワールド / 重力波 / 一般相対論 |
Research Abstract |
近年、余剰次元のあるブレーンワールドと呼ばれる宇宙モデルの研究が盛んに行われている。このようなモデルでは、サブミリメートル以下のスケールで余剰次元効果が現れて、重力が通常の一般相対論とは異なるふるまいをする。この余剰次元効果の宇宙論への影響を調べること、具体的には、揺らぎの生成・進化のシナリオを明らかにし観測に対する予言をすることが本研究の目的である。そのために(1)インフレーション中における重力波揺らぎの量子論的な生成と(2)その後の宇宙における重力波の進化と観測に対する示唆に関する研究を行った。 まず、ロンスキアン法にもとづいた重力波のスペクトルの計算手法の定式化を行い、また具体的に計算を実行するための数値計算コードの開発を行った。この方法の優れている点は、初期条件を量子論的に正しく設定できる点と、効率のよい計算が可能な点である。 このロンスキアン法に数値計算を組み合わせる手法を、まず(1)に適用した。重力波揺らぎの初期スペクトルを様々なインフレーションモデルに対して計算した結果、ブレーン宇宙における初期スペクトルは、対応する4次元の通常のインフレーションモデルにおいて得られるスペクトルに簡単な変換を施したものでよく近似できるという有用な事実が明らかになった。続いて、同様の手法を(2)に対しても適用した。その結果、宇宙膨張率の変更により重力波の振幅が増す効果と、重力波が余剰次元に逃げることで振幅が減る効果により、LISAやDECIGOなどが直接検出を目指している背景重力波のスペクトルは変更を受けること、しかし、ふつうに考えられている、インフレーション後に輻射優勢宇宙が続くモデルでは上記2つの効果が打ち消しあい、通常の宇宙論で得られるスペクトルと同じものが予言されることが明らかになった。また、最終的に得られるスペクトルは初期条件にほとんど依存しないこともわかった。
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Research Products
(4 results)