2006 Fiscal Year Annual Research Report
ブレーン宇宙論における摂動の進化と観測に対する予言
Project/Area Number |
05J01642
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小林 努 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 宇宙論 / 一般相対論 / 宇宙物理学 / ブレーンワールド |
Research Abstract |
ブレーンワールドと呼ばれる、弦理論から示唆される高次元宇宙モデルに関する研究をおこなった。特に、摂動のふるまいを中心とした重力の性質に注目し、以下のような成果をあげた。 5次元の重力がガウス・ボンネ項という高階微分補正項を含む理論で記述される場合のブレーンワールドについて研究をおこなった。ブレーン上の重力場の有効方程式は、形式的には非常に複雑なものになることが知られている。これに対して微分展開法を適用することで方程式を簡略化し、バルクの曲率半径[エネルギースケール]と比べて長距離[低エネルギー]ではアインシュタイン重力が実現されていることを示した。また、このモデルにおける宇宙論的摂動を計算するための定式化をおこない、得られた一般的な摂動方程式について、いくつかの極限的な場合に摂動がどのようにふるまうかを解析した。その結果、(1)低エネルギーにおいて長波長の摂動のふるまいはアインシュタイン重力におけるものと同じである(2)低エネルギーにおいて短波長の摂動のふるまいは4次元のスカラー・テンソル理論で記述される(3)高エネルギーでは、通常の直観とは反対に高次元効果は効かなくなり、摂動は4次元的な方程式で記述されるということが明らかになった。 磁束によって2次元がコンパクト化されている6次元のブレーンワールドにおいて、弱重力場の研究をおこなった。ブレーンに1次元余分な拡がりを持たせることで任意の物質場をブレーン上に置くことができるというアイデアに着目した。ブレーンに局在した物質を源とする線型摂動を解析し、ブレーン上の重力は形式上スカラー・テンソル理論で記述されるが、長距離ではスカラーモードの寄与は抑えられているために、結果として4次元の通常の重力理論が再現されていることを示した。
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Research Products
(4 results)