2006 Fiscal Year Annual Research Report
超弦理論におけるモジュライ場の現象論的、宇宙論的側面の研究
Project/Area Number |
05J01643
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
桧垣 徹太郎 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 弦理論的現象論 / 超対称性の破れ / モジュライの安定化 / 弦理論的宇宙論 |
Research Abstract |
超弦理論は標準模型を越えて我々の世界の相互作用を統一的に理解できる理論であるが、問題が残されている。それは摂動論的には真空が無数に縮退しており、実験結果を無矛盾に再現するような現実的な弦模型は得られていない事である。しかしこれは非摂動論的な効果によって真空の縮退が解けると思われる。また、この縮退した真空の連続的自由度はモジュライ場の期待値の自由度に対応する。私は、非摂動効果を通じたモジュライ場の期待値の決定機構に注目し、この課題に取り組んでいる。またモジュライ場の期待値自身は結合定数と関係しており、モジュライ場のダイナミクスは現象論的にも重要である。今年度は、フラックスコンパクト化された場合におけるモジュライ場の固定法を解析した。ここでフラックスコンパクト化は、我々の物質場が住むDブレインが存在する時に起こる自然な機構である。この場合に有用なのは、Dブレインやそのフラックスが存在する事により、モジュライが固定される事である。1つ目の論文では、フラックス起源のポテンシャルの具体例を用いながら、どのような場合にモジュライ場が質量を持って、期待値が決まるかを解析した。この時、モジュライ場のポテンシャルは非常に複雑な形をしているが、「固定される=質量を持つ」という事実に注目し、ポテンシャルの2次の項(質量項)が適当なフラックスによって存在する事により、モジュライが固定される事を示した。2つ目の論文では、モジュライが固定される場合、一般的に負の宇宙項が出る問題を解決するシナリオを示した。この時、現象論的興味から上記のフラックスの効果によって一部のモジュライが非常に重くなり、低エネルギーに比較的軽いモジュライが1つ残る事を仮定した。その上で、Dブレイン起源の非摂動効果と超対称性を破る準安定な配位があれば、それらの効果でモジュライが固定され、そしてそのモジュライの負の効果を打ち消し、宇宙項が正になる可能性があることを示した。この場合、Dブレインの配位はオラファテ模型に対応する。またこの時に、超対称粒子の質量スペクトラムを調べた。
|
Research Products
(2 results)