2005 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理計算によるセラミックスの有限温度物性に関する研究
Project/Area Number |
05J01676
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤平 哲也 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 第一原理計算 / フォノン / ペロブスカイト / ソフトモード / 相転移 / ダイヤモンド / グラファイト / 比熱 |
Research Abstract |
本研究は,フォノン状態の第一原理計算を中心的手段として,セラミックスの相転移挙動,熱力学量といった有限温度物性に関する問題に取り組んだものである. まず,複合酸化物の格子不安定性と相転移の定量的研究として,LaAlO_3および関連ペロブスカイト化合物を計算対象にとりあげ,フォノン分散関係の第一原理計算を行った.LaAlO_3の圧力誘起相転移に関して,実験では観測が困難な秩序パラメータの定量的解析を行い,この化合物のソフトモードの挙動が従来知られていた変位型相転移の一般則に反するものであることを確認した.さらに関連するREAlO_3,REGaO_3化合物におけるソフトモードの系統的な計算を行い,LaAlO_3において見出されたのと同様の振る舞いが他の化合物においても観測される可能性があることを示した.また,圧力下におけるソフトモードの振る舞いとペロブスカイト化合物の構造の歪みの度合いを特徴付ける因子であるtolerance factorの間に良い相関が見出された.これら一連の計算結果により,ペロブスカイト構造の安定性,相転移挙動の制御における一般的指針へとつながる可能性のある重要な知見が得られた. また,フォノン状態計算の有限温度熱力学的物性への応用として,炭素同素体および窒化硼素多形の高温比熱を題材として,擬調和近似にもとづく計算を行った.フォノン分散の計算結果は実験で観測されている振動数をよく再現し,グラファイト(六方晶窒化硼素)中の面内のボンド伸縮に関係するモードはダイヤモンド(立方晶窒化硼素)中の格子振動よりも高い振動数を持つことが示された.その結果,高温で関連する多形の比熱およびデバイ温度の大小が逆転するという現象が起こる.これらは比熱測定の実験にもとづくいくつかの報告をサポートするものである。
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Research Products
(1 results)