Research Abstract |
本研究では,希薄磁性半導体中の磁性イオンの局所構造・電子状態を解析し,磁性発現機構を解明する事を目的としている. これまでに,酸化物半導体であるZnOに磁性元素として3d遷移金属元素を添加し,固相反応させて作製したセラミックス粉末,およびPulsed Laser Deposition(PLD)法による薄膜試料の作製を行った.X線回折による構造解析の結果,これらの試料はウルツ鉱型構造のZnO単相であった.これらの試料について,遷移金属元素周辺の局所構造,電子状態について調べるために,放射光施設を利用して遷移金属L_<2,3>-X線吸収端近傍微細構造(XANES)の測定を行った.3d遷移金属L_<2,3>端XANESには,内殻2p軌道のスピン-軌道相互作用と,3d電子間の強い電子相関により,複雑な微細構造が表われることが知られている.これらの効果をあらわに取り扱うことのできる,相対論・多電子系の第一原理計算手法の開発を行い,この様な複雑なスペクトルの解析に成功した.そして,本手法を適用し,得られたXANESスペクトルについて,理論解析を行った. まず,様々な固溶モデルを構築し,各モデルについて理論スペクトルの計算を行った.得られた理論スペクトルを実験スペクトルと照合することにより,ZnO中の遷移金属元素の価数,スピン状態,配位数などを解明することに成功した. 例えば,Mnを5mol%添加した試料については,Mnは全て,Znサイトを+2価,高スピン状態で置換していることが分かった.また,この試料について,磁化測定を行った結果,全て常磁性であり,MnがZnサイトを単純置換した場合は,強磁性は発現されないということが示唆された.
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