2005 Fiscal Year Annual Research Report
鉄合金における炭窒化物の析出kineticsに関する研究
Project/Area Number |
05J01681
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮本 吾郎 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | マルテンサイト / 焼もどし / 合金元素分配 / 炭化物 |
Research Abstract |
Fe-0.6%C合金マルテンサイトを523K〜923Kで焼もどした際の鉄炭化物の析出挙動に及ぼす1〜2%のMn,Si,Al添加の影響を,特に炭化物/母相間での合金元素の分配挙動に注目して検討した.2%Si添加材(2Si材)は523K〜923K焼もどしで,2%Mn添加材(2Mn材)は723K〜923K焼もどしでそれぞれ大きな軟化抵抗を示す.これは523K〜723K焼もどしでは2%のSi添加によって微細なε炭化物(Fe_<2〜3>C)からセメンタイト(θ:Fe_3C)への遷移が抑制され,723K〜923K焼もどしでは2%のSiおよびMnの添加によってθが微細化されるためである.723Kで焼もどすと,2Si材では初めsiの分配を伴わないパラε炭化物が生成し,ε→θ遷移とほぼ同時にSiはθから吐き出されるのに対して,2Mn材ではθ/α間でのMn分配は見られない.一方,923Kで焼もどすと,2Si材では短時間の焼もどしでSiはθからα中へ吐き出され,θ中にSiはほとんど固溶しないのに対して,2Mn材では焼もどし初期にはθ/α間でMnは分配せず,長時間焼もどしによって徐々にθ中にMnが濃化することが明らかになった.723Kおよび923K焼もどしでは,θの成長・粗大化がθ/α間での合金元素の分配に律速されるためθが微細になるが,723KではSi添加の方が,923KではMn添加の方がθの微細化効果が大きい. 炭化物と母相間での合金元素の分配を伴わないパラ炭化物の安定性を評価するため第一原理計算を行った結果,Siが固溶することでθは顕著に不安定化することが明らかとなった.これを基に合金元素の分配を伴わない種々の擬平衡を考慮した状態図計算を行うことで,SiがMnよりもα/θ間で分配しやすいことを熱力学的な観点から説明できた.
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