2006 Fiscal Year Annual Research Report
自律型社会ロボットの身体相互作用知の構成論に関する研究
Project/Area Number |
05J01685
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷口 忠大 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 強化学習 / モジュール型学習 / STDP / 記号現象 / 記号創発 / シェマ / 協調行動 / 社会ロボット |
Research Abstract |
人間社会において適応的に活動する自律型社会ロボットを実現するためには,自律ロボットが自らの身体を用いた人間や環境との実時間的な相互作用を通して知能発現していくことが求められる.また,それらの実時間的な発現を促す情報は人間社会で用いられる「記号」や「言語」の原初の形であると考えられ,人間の環境認識や情報伝達を構成的に理解する視点からも重要である. 第二年度となる本年では,上のような視点に基づき,(1)シェマモデルを含むモジュール型学習のマルチエージェント系への拡張,および(2)実時間適応行動機構としての問題点の指摘,さらに(3)記号創発に基づくその改善方法を提案し,発表をおこなった. 具体的には,(1)として目標決定を行うleaderエージェントとその目標を推定するfollowerエージェントにより構成される協調タスク環境下で状況弁別型強化学習機構を適用し,その有効性を検証した.これにより,時変的で動的な物理的環境に対処する為のモジュール型学習機構が,複数エージェントの協調という社会的面からも重要であることが示唆された.(2)しかし,そこではダイナミクスから他者の意図を同定する過程で不可避に時間遅れが生じ,それが系全体としてのパフォーマンスの向上を押し留める事も明らかとなった.(3)では,エージェントが環境との相互作用を通じ累増的に行為概念を獲得した後に,これらと環境変化に先行する情報を関係付けることにより,自己閉鎖的な学習の中でその情報に意味づけを与え,実時間的な適応が可能になることを示した.これは,人間が交わすような「合図(sign)」に示唆を受けた記号現象の構成論となっている.また,この機構は人間の海馬や新皮質で近年発見され注目されているSTDP学習則に基づいており,それらの部位が人間の記号現象において担う役割の理解に示唆を与えると考えられる.
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Research Products
(1 results)