2005 Fiscal Year Annual Research Report
高分子の結晶化誘導期における構造形成と最終モルフォロジーの変化
Project/Area Number |
05J01844
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小西 隆士 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 結晶化 / メゾ相 / 液晶 / 広角X線散乱法 / 小角X線散乱法 / 単結晶 / アイソタクチックポリプロピレン / 光学顕微鏡 |
Research Abstract |
高分子の結晶構造は金属や低分子の結晶構造と異なり、結晶部分と非晶部分が複雑に混じり合った構造を持つ。そのため、高分子結晶はμm(10^<-6>m)オーダーとnm(10^<-9>m)オーダーの2つの階層構造を持つ複雑な構造を持つ。しかし長い間、この2つの大きさの異なるサイズに対しての統一的な挙動の解明は高分子物理学の未解決問題の1つとされてきた。 そこで我々は結晶化の際に結晶の前駆段階に着目し、結晶化機構を解明する手がかりとした。本年度は特にアイソタクチックポリプロピレン(iPP)のメゾ相からの結晶化について、小角X線散乱、広角X線散乱、光学顕微鏡観察により詳しく調べた。このメゾ相は液晶的な構造であり、室温で直径約10nmのノジュール構造と呼ばれるモルフォロジーを持つことが知られている。このメゾ相iPPを種々の結晶化温度でアニールすると、ノジュール構造は自己相似性を保ったまま、あるサイズまで成長し、そのサイズはアニール温度が高いほど大きくなった。また、ノジュールサイズの増大と同時に、ノジュール内ではメゾ相が結晶相に転移することがわかった。さらに長時間アニールすると高温時のみであったが、ノジュール構造が融合し、μmサイズの針状結晶を形成することがわかった。 典型的な高分子結晶のモルフォロジーである球晶は、ラメラ構造が積層していくことで形作られていくと考えてられている。しかし、メゾ相からの結晶化の場合、はじめにnmオーダーのノジュール構造が試料全体に存在し、それらの構造が粗大化の後、融合することでμmオーダーの単結晶的な針状結晶モルフォロジーを形成することを見出した。 以上のように、iPPのメゾ相を経由する結晶化機構における、様々なサイズでの構造変化を統一的に理解することに成功した。また、高温では単結晶が生成するという結果が得られ、これは物性制御という観点からも非常に興味深い結果である。
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Research Products
(3 results)