2005 Fiscal Year Annual Research Report
小胞体ストレス応答と形質細胞分化を制御する転写因子XBP1の作用機作の解明
Project/Area Number |
05J01873
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松居 利江 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 小胞体ストレス応答 / 転写因子 |
Research Abstract |
細胞は構造異常タンパク質が小胞体内に蓄積する小胞体ストレスに対し、さまざまな防御機構を備え持つ。XBP1は高等動物細胞の小胞体ストレスで誘導される転写因子の1つである。本研究はXBP1の作用機序や役割を解明する事を目的として実験を行った。 XBP1の転写標的遺伝子とされている小胞体シャペロンのBiPや小胞体関連分解装置のEDEMはTet-offシステムで発現させた生理的発現量のXBP1ではほとんど転写誘導がみられなかった。この結果より、XBP1は翻訳後修飾や結合タンパクにより転写活性が調整されている可能性が考えられた。XBP1のリン酸化を正リン酸ラベルにより解析したところ、リン酸化は受けるが小胞体ストレス非依存的であり、転写活性を制御する重要な要素ではないと考えられた。そこで小胞体ストレス下でのXBP1の活性を制御する結合タンパクの探索に取り組んだ。小胞体ストレスで誘導されるbZIP型の転写因子ATF6に注目し、免疫沈降法によりXBP1との結合を検討した。その結果、小胞体ストレスで誘導した内在性のXBP1の一部はATF6と結合していることが明らかとなった。さらにXBP1が結合することで知られているシス配列UPREへの結合をゲルシフトアッセイで解析したところ、XBP1-ATF6ヘテロダイマーの方がXBP1ホモダイマーよりも強い結合を示した。XBP1は小胞体ストレス下でATF6とヘテロダイマーを形成し、なんらかのターゲット遺伝子上流に強い機能を発揮していると示唆された。 XBP1は小胞体ストレスだけでなく、形質細胞分化や脂質合成等にも関与することが報告されている。今回の結果より、これらの様々な生体応答はXBP1と結合する他の転写因子や、未知の機能タンパクにより制御されている可能性が考えられる。今後、XBP1制御因子と下流の転写標的遺伝子についてさらに解析を進める予定である。
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