2005 Fiscal Year Annual Research Report
雌雄交尾器の「錠と鍵」的共進化過程における遺伝的背景の解明
Project/Area Number |
05J01879
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
雀部 正毅 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 交尾器進化 / 性選択 / 種分化 / オサムシ / QTL解析 |
Research Abstract |
性選択によって多様化する交配隔離形質の進化過程を解明することを目的として、種特異的な交尾器形態に雌雄の「錠と鍵」的対応が見られるオオオサムシ亜属を用いて研究を行っている。これまでに2種のオサムシの種間交配からF1・F2および両方向戻し交配(BC1・BC2)集団を得た。これらの世代について、以下のような研究を展開した。 1.オサムシにおける予備的連鎖地図の構築 F1のきょうだい交配(full-sib)から得られたF2世代について、AFLPにより遺伝子型を特定し連鎖解析を行うことで、予備的な連鎖地図を作製した。現在までに約50個のAFLPマーカーが、オサムシの染色体数(n=13)と一致する13の連鎖群上に位置づけられている。この結果は、オサムシとAFLPを用いた現在の系において、比較的精度の高いマッピングが実行可能であることを具体的に示すものである。 2.交尾器形態の遺伝的背景 交尾器形態を支配する遺伝的背景の概要を把握するため、世代平均を用いた解析を行った。F1・BC1・BC2および両親(P1・P2)の5世代について交尾器形質を計測し、世代ごとの平均・分散のデータから、交尾器形態に種間差をもたらす遺伝効果と有効因子数を推定した。遺伝効果についてはjoint-scaling testを行い、有効因子数はCastle-Wrightの推定式を用いた。その結果、(1)関与遺伝子座の効果はほとんどが相加的であること、(2)オス交尾片の長さと幅に関与する遺伝子座の推定数はそれぞれ4.9±1.9、3.9±1.6個、メス膣盲嚢の長さについては1.5±0.6個であること、が明らかになった。以上の結果から、交尾器形態は比較的単純な遺伝効果をもつ少数の遺伝子座によって支配されていることが示唆された。 3.マッピング用の世代育成 精度の高いQTLマッピングを行うためには、これまでに得られたF2よりも多数の個体が必要であるため、新たに分離世代の育成に着手した。現在までに充分な数のF1が得られており、平成18年度初旬にはF2の育成が完了する。
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