2006 Fiscal Year Annual Research Report
肝胆膵前駆細胞におけるホメオボックス遺伝子prox1の機能解析と臨床医学への応用
Project/Area Number |
05J01902
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉本 貴宜 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | prox1 / 癌抑制遺伝子 / RNA変異 / 非対称性分裂 / shifted termination ε |
Research Abstract |
ホメオボックス遺伝子prox1はショウジョウバエの神経芽細胞の分化誘導に関与するprosperoと高い相同性を持つ遺伝子であり、これまで脊椎動物でもリンパ管・肝臓・膵臓・レンズ・網膜等の発生と器官形成の過程で重要な役割を果たしていることが分かっている。今回の研究ではまず膵臓癌の臨床検体を用いた免疫染色を行い、prox1の発現が腺管細胞に偏在しまたprox1の発現が高いほど癌の分化度も高いことを確認し、成人の膵組織でもprox1が分化誘導と増殖抑制に関与している可能性を示した。次に膵臓・大腸・食道など複数の癌細胞株や臨床検体において、prox1はゲノム上に変異は認められないもののmRNA上では特定の箇所でアデノシンがイノシンに変異していることを明らかにした。この変異型と野生型のprox1をそれぞれ強発現させ比較した結果、in vivoとin vitroいずれにおいても変異型prox1では細胞増殖抑制の働きが失われている事が示された。増殖抑制因子がその機能を失い発癌に至る過程ではゲノム上の欠損やメチル化、変異等がよく知られているが、最近mRNAにおける変異がエピジェネティックな機構として発癌に関与している可能性が注目されてきており、prox1でもmRNAでの変異によって癌抑制遺伝子としての働きが失われた結果、未分化維持の働きと細胞増殖が活発化し、発癌に至る可能性が考えられた。なお、今回のRNA変異の同定ではshifted termination assayを応用したスクリーニング手法を用い、同法が従来のゲノム変異に限らずRNA変異の検出にも有用である事が示された。以上の研究は消化器腫瘍に関わる新たな因子とその発癌機構の解明に貢献し、今後の治療法の開発にも寄与するところが多いと考えている。
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Research Products
(2 results)