2005 Fiscal Year Annual Research Report
希少種ホシガレイの栽培化による資源再生へ向けた初期生態解明
Project/Area Number |
05J01949
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
和田 敏裕 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ホシガレイ / 栽培漁業 / 放流技術開発 / 摂餌生態 / 有明海 / 宮古湾 / 浅海成育場 |
Research Abstract |
ホシガレイは、近年資源水準が著しく低下しているが、魚価が非常に高いため、新たな栽培漁業対象種として注目されている。本年度は、本種の栽培化を進める上で土台となる、(1)天然稚魚の生態解明および(2)放流稚魚の生態解明に関する研究を行い、それぞれ平成17年度日本水産学会大会において発表した。また、天然稚魚の分布と成長に関する論文をFisheries Science誌に発表した。それらの結果概要は、以下のようである。(1);採集が困難であると考えられてきたホシガレイ稚魚-2歳魚(合計計478尾;全長15.2-447mm)を1年6ヶ月(03年3月-04年6月)にわたり有明海島原半島沿岸域で連続的に採集し、稚魚の分布、食性、成長および産卵親魚への漁獲加入過程について解明した。採集結果より、主に3月に浅海干潟域の成育場に加入した稚魚(全長約16mm)は翌4-6月には300mm前後まで高成長し、沿岸成育場から移出するものと考えられた。稚魚は着底直後から80mmではヨコエビ類を、それ以降ではアミ類、コツブムシ・ヘラムシ類、ヤドカリ類、エビ類、カニ類などを摂餌するが、成長に伴いより大型の甲殻類へと摂餌内容が変化した。(2);04年7月9日に岩手県宮古湾において耳石標識を施したホシガレイ種苗19000尾(全長81.2±9.7mm)を放流し、放流後1,3,8,15,31,45日に幅2mの桁網を小型船により曳網して放流魚を再捕した。採集個体数は、調査日毎に、25,51,23,14,3,0尾となり、密度(n/100m2)は3日後に19.4を示した後、急激に低下した。平均全長は15日まで78.1mmと停滞したが、31日では99.6mmと有意に大きくなった。摂餌個体率は、8日以降は100%となり、胃内容物重量も、8日以降は体重の2.1%を超え優位差がなかった。稚魚の主要な餌生物はヨコエビ、クーマ類であり、各38,52%Nを占めた。これらのことから、放流魚は少なくとも8日後には本海域に馴致するが、大型個体から比較的速やかに逸散していくことが推察された。以上のように、本研究によって、希少種であるホシガレイ稚魚(天然魚・放流魚)の生態が解明されつつある。今後は、ケージ実験を用いた成育場(放流場所)の評価や、定置網や桁網採集による捕食者および競合者の探索を岩手県宮古湾をモデルフィールドとして行い、ホシガレイの至適放流技術開発に関する研究をさらに進める予定である。
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Research Products
(1 results)