2006 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類着床前発生においてMAPKが制御する遺伝子群の同定と解析
Project/Area Number |
05J01982
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前川 桃子 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | MAPキナーゼ / 着床前発生 / マイクロアレイ |
Research Abstract |
私は哺乳類に特有の着床前発生におけるMAPキナーゼシグナル伝達経路(ERK経路、JNK経路、p38経路)の働きに注目して研究を行った。p38経路とJNK経路を阻害すると胚盤胞形成に異常が見られること、そして、着床前発生の期間、p38とJNKは活性化していることを明らかにした。次にマイクロアレイによるゲノムワイドな解析によって、アレイ上の約30,000個の遺伝子のうち、p38経路とJNK経路の阻害に感受性である遺伝子はたった156個であることが分かった。さらに、この156遺伝子のうち、10遺伝子の発現はp38経路とJNK経路の両方の阻害に感受性であることが明らかになった。この10遺伝子には軸形成やパターン形成に機能が知られているものが含まれていた。10遺伝子のうちいくつかの遺伝子の発現をsiRNAを用いて同時に抑制すると、胚盤胞形成に異常が見られた。これらの結果より、JNK経路とp38経路がマウスの胚盤胞形成に関与することが明らかになり、この発生過程に重要な働きをする遺伝子群を同定することができた。次に、コンパクションよりも早いステージでの細胞分裂を制御するメカニズムについて調べた。2細胞期後期の胚でERKの活性化を阻害すると4細胞期のG2期で細胞周期が停止し、また、ERKの活性化阻害剤を取り除くと再び細胞周期が進行し、発生が進むことが分かった。さらに、4細胞期のG2期で停止している胚では、コントロール胚に比べて割球間の接着が弱くなっていた。マイクロアレイ解析により、G2期で停止し、その後発生が再開するという、胚の形態と一致した発現をする遺伝子群には、細胞間の接着分子をコードしている遺伝子が含まれており、それらの発現はERK経路によって正に制御されていることが分かった。これらの結果から、細胞分裂と細胞接着が正しくおこるためにはERKが必要であることが明らかになった。
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