2005 Fiscal Year Annual Research Report
神経変性疾患の発症におけるVCPの酸化修飾の役割の解析
Project/Area Number |
05J01996
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野口 昌克 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 神経変性疾患 / 酸化ストレス / 酸化修飾 / 小胞体 / VCP / ATPase活性 / レドックス / 細胞死 |
Research Abstract |
活性酸素(ROS)や活性窒素(RNS)の過剰な発生は、様々な疾病、がん、神経変性疾患、炎症などを引き起こすと考えられている。VCPは、AAAファミリーに属する蛋白質で、細胞周期、膜融合そして蛋白質分解など多様な細胞機能に関与している。我々は、これまでの研究で、ATPase活性を失った変異体VCPが異常蛋白質の蓄積や空胞形成を誘導し、最終的に細胞死を引き起こすことを示してきた。すなわち、VCPのATPase活性がこれらの細胞機能の制御に関与していることが推測されるが、VCPのATPase活性を制御する分子機構は明らかとされていなかった。今回我々は、ROS/RNSがVCPのATPase活性を低下させることを見いだした。さらに、ROS/RNSによるATPase活性の制御に必須な1つのシステイン残基を特定し、このたった一つのシステイン残基を別の酸化を受けないアミノ酸に置換することでROS/RNS耐性型VCPを得ることが出来た。また、このROS/RNSによるVCPのレドックス制御が、蛋白質分解の制御機構に関与する可能性を示した。さらに、酵母を用いて、このVCPのレドックス制御が生体内でも利用され、細胞周期停止や細胞死の誘導に関与することを明らかにした。以上の結果から、VCPがROS/RNSの重要なターゲットの一つであり、ROS/RNSによるVCPのATPase活性の低下が、蛋白質分解や細胞周期などの制御に関与していることが示唆された。以前よりVCPは、神経変性疾患やガンの発症に関係している可能性が指摘されている。したがって、過剰なROS/RNSによるVCPの機能障害が、細胞障害および細胞死を誘導し、様々な疾患、神経変性疾患やがんなどの発症にも関与していることが推測される。
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Research Products
(2 results)