2006 Fiscal Year Annual Research Report
神経変性疾患の発症におけるVCPの酸化修飾の役割の解析
Project/Area Number |
05J01996
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野口 昌克 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 神経変性疾患 / 酸化ストレス / 酸化修飾 / 小胞体 / VCP / ATPase活性 / レドックス / 細胞死 |
Research Abstract |
VCPは、AAAファミリーに属する蛋白質で、膜融合や蛋白質分解に関与している。当研究室では、神経変性疾患の発症において、細胞障害・死を誘導する蛋白質としてVCPを同定した。さらに最近、家族性筋ミオパチーの一群であるIBMPFDの原因遺伝子としてVCPが同定された。ATPase活性を失った変異体VCPは、ユビキチン化蛋白質の蓄積や細胞質の空胞、細胞死を誘導する。このことから、病理的な状況におけるVCPのATP分解活性の制御機構を解析することが神経変性疾患の発症機構の解明にとって重要であると考えられた。 本研究では、まずVCPのATPase活性を制御する機構を明らかにした。VCPのATPase活性が、活性酸素/窒素種によって低下することを見いだし、その活性制御が、522番目のシステイン残基の酸化修飾によって担われていたことを示した。そして、過剰な活性酸素種が、VCPの機能低下を介して、小胞体の機能障害および細胞死を誘導することを示した。 つづいて、IBMPFDで見いだされた変異体VCPの解析を行った。IBMPFDの病理像が、ATPase活性を失った変異体VCPが引き起こす細胞障害と共通点を持つことから、変異体VCPのATPase活性は低下していることが推測された。しかし、実際活性を測定したところ変異体VCPの活性はすべて亢進していた。さらに、IBMPFDの変異体VCPが、蛋白質凝集体の形成を促進する活性を有していることを見出した。以上の結果から、IBMPFDは、VCPの活性が低下したためではなく、活性が亢進した変異体VCPによって凝集体形成が促進されたために病理像を引き起こしていることが示唆される。 以上本研究は、VCPのATPase活性の制御機構および凝集体形成におけるVCPの役割を明らかにした。
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