2005 Fiscal Year Annual Research Report
ブナ科樹木の地形特異的な空間分布に果たす更新初期段階での外生菌根菌の役割
Project/Area Number |
05J02031
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻野 亮 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 外生菌根菌 / ブナ科 / 地形 / 屋久島 / 照葉樹林 |
Research Abstract |
地形特異的なキノコ子実体の発生量を定量的に調査するためにキノコ探索のルートセンサスを行った.ルートは尾根と谷に1本ずつ4箇所の低地照葉樹林内に設置して,2005年8月下旬から9月上旬にかけて行った.全16回の調査で22科180株を確認した.主要な科であったベニタケ科・テングタケ科・イグチ科・オニイグチ科・サルノコシカケ科は尾根ルートで,キシメジ科は谷ルートで推定発生密度が高かった.外生菌根を形成するブナ科の樹木が尾根に生育するのに対して谷にはあまり生育しないことから(Tsujino et al. in press),ベニタケ科・テングタケ科・イグチ科・オニイグチ科は菌根を形成する制約によって地形特異的にキノコが発生したのであろう.ただしキシメジ科は菌根菌を含むが,腐生菌も多く含んでいることから必ずしも尾根でよく見られるということはなかった. すべての種を対象にして距離標本法をもちいて尾根・谷ルートのキノコ株発生密度を推定すると318.8株/haと388.6株/haであった.またESW値(発見しやすさの指標)は尾根ルートで1.57m,谷ルートで0.85mであったことから,林床を歩きながら子実体を探索する場合に良い発見率が期待できるのは探索者の1〜2m近傍だけであることがわかった.また,子実体の発見しやすさが地形によって大きく異なっていたのは,林床環境が異なることで発見率が変化することと,発生するキノコ相が変化することによると思われる. 一方,平成17年度までの継続調査によって40科142種と多数の同定不能種を発見した.本研究の結果,多数の菌類子実体が発見されて同定された一方で,多数の未同定種も発見された.これは屋久島低地照葉樹林に多数の未記載種があることを意味している.
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Research Products
(1 results)