2005 Fiscal Year Annual Research Report
世俗化の中のドイツ・カトリック教会と「再キリスト教化」
Project/Area Number |
05J02048
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
島田 勇人 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 近代史 / ドイツ / 教会 / 世俗化 / 再キリスト教化 |
Research Abstract |
本研究はヴァイマール期ドイツに関する教会社会史的視角から「再キリスト教化」という現象を問い直すものであり、今年度は教区レヴェルにおける宗教活動の中心であった司祭階層の思想・政治的特質について考察した。具体的な分析対象として第一次世界大戦時に教会を覆った超宗派ナショナリズムと、世紀転換期にカトリシズムの広い範囲で見られた改革運動のその後の行方について扱った。 まず超宗派ナショナリズムは、司教団による拒否にもかかわらず、戦後、特にカトリシズム右派と呼ばれた一団(右翼政党や中央党の一部のカトリック、保守思想家など)や多くの議会外政治闘争団体(有名なものとして鉄兜団や青年ドイツ騎士団)の中に受け継がれていった。そしてそれらの組織の中には少なからぬカトリック聖職者が存在し、戦時の超宗派的な民族共同体への回帰を訴えていたのである。彼らは数の上では少数派であったとはいえ無視しえぬ存在であり、実際に他の聖職者や信徒たちへの影響力を恐れた司教団は彼らが活動する組織を認めることはなかったのだった。 また世紀転換期の「改革カトリシズム」は、カトリシズムの近代化への順応を模索した動きであり、その後のカトリシズムの発展に大きく寄与した。しかしそれは同時に、下級聖職者の厳格な規律化を伴った教皇権至上主義への明確な批判でもあり、当時のカトリシズム内に拭いがたい痕跡を残した。ヴァイマール期には一部分の要求が認められたとは言え、多くの聖職者によって望まれた教会の民主化や生活改善などを求める動きは司教団によって懐柔され、実を結ばなかった。その中のある者はそれ以降も自らの要求を貫き、やがて教会組織から阻害されていくのだった。 以上が本年度の研究内容であり、これによってヴァイマール期の聖職者の政治・思想的状況の一端を明らかにしえたと考えるが、その教区民へ対する社会的な影響力に関しては次年度以降の課題としたい。
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