2006 Fiscal Year Annual Research Report
世俗化の中のドイツ・カトリック教会と「再キリスト教化」
Project/Area Number |
05J02048
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
島田 勇人 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 世俗化 / ドイツ / カトリック教会 / 再キリスト教化 / 「宗教復興の時代」 |
Research Abstract |
本研究はヴァイマール期ドイツに関する教会社会史的視角から「再キリスト教化」という現象を問い直すものであり、今年度は宗教的奇跡をめぐるカトリック教会と信徒たちの対応について考察した。その際具体的な分析対象としては、聖痕者テレーゼ=ノイマンをめぐる「コナースロイト事件」を取り上げた。 「コナースロイト事件」は、1926年春、バイエルンの寒村コナースロイトにおいて敬度な28歳の女性テレーゼの体に聖痕が発現したことから始まる。彼女の身辺にはそれ以外にも様々な霊的現象が見られ、それらは驚きと畏敬、或いは疑いの目を持ってメディアで盛んに論じられた。従来の研究の多くは、こうした現象の真偽をめぐる神学・医学的な論争や、のちにテレーゼ支持者とナチスとの間で生じた政治的な争いに注目してきた。しかし本研究が取り上げるのは、多くの訪問・巡礼者の群れがこの小農村に押し寄せ、その騒擾は教会上層部や警察も無視できない次元にまで発展していたという側面である。 まず、新聞や当地の教区司祭の日記などから、しばしば数千人を超える群集が押し寄せていたが、その中には熱心な宗教心を持った者も少なくなかったことが読み取れる。特にテレーゼが起こす奇跡は、彼女の擁護者が発行していた出版物によってさかんに宣伝された。そうして新たな巡礼地の誕生への気運が高まっていく一方、この動きにヒエラルヒーの権威に対する脅威を感じたカトリック教会上層部は厳しい措置によって巡礼を抑制する。しかし巡礼の是非をめぐる議論はその後もテレーゼ支持者による定期刊行物の中で展開されていくのである。 以上が今年度の研究実施状況であるが、来年度はここで明らかにした個々の考察結果を踏まえた上で、「コナースロイト事件」を「再キリスト教化」という現象の中に位置付ける作業を行いたい。
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Research Products
(1 results)