2005 Fiscal Year Annual Research Report
「思いやり」の起源-霊長類における協力行動の実験的分析-
Project/Area Number |
05J02053
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
服部 裕子 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 霊長類 / 協力行動 / 利他行動 / 社会的知性 |
Research Abstract |
これまで行った研究から、サルは自発的に分業して協力することがわかっている。さらに、たとえ即時的な報酬がない場合でも、毎試行役割が交代されるのであれば、相手が餌を手に入れるために協力に参加することが示されている。本年度は、この相互的に利他行動を行う場面を用いて、役割交代までの試行数が増えた場合それでも協力を維持するのか、また協力が無くなるとすればその過程で行われる個体間のコミュニケーションになにか違いが見られるのかを調べた。結果、セッション間でのみ役割が交代される条件でもサルは協力を維持することがわかった。しかしながら、協力成功試行数は前回の実験より減少し、また協力達成までの時間もより長くかかっていたことから、「不公平な状況」であるということを何らか認識した上で協力を行っていたと考えられる。協力成功試行と協力失敗試行で見られたコミュニケーションの違いを分析したところ、協力成功試行では行動を起こす前に個体間で頻繁にアイコンタクトが見られたのに対して、協力失敗試行では「相手に対して背中を向ける」等、相手からの視線を避ける行動がより多く見られた。このことから、視線によるコミュニケーションは他者と協力を行う際に重要な役割を果たしていると考えられる。ただし、相手との間に不透明な仕切りを入れるなどして視覚的なコミュニケーションを制限しても、協力成功試行は変わらなかったことから、必ずしも協力に必要な条件ではないこども示唆された。アイコンタクトなどの視線によるコミュニケーションは、それを用いることができる時には優先的に用いられるコミュニケーションであるが、用いることができない時には聴覚などの別のコミュニケーションでそれを補償し、協力していたと考えられる。今後、パートナーを変えるなどして、これまで彼らが行ってきた協力が特定の相手との間でのみ成立するのかどうか、協力が成立する個体間関係の要因を調べる計画である。
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Research Products
(3 results)