2006 Fiscal Year Annual Research Report
「思いやり」の起源-霊長類における協力行動の実験的分析-
Project/Area Number |
05J02053
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
服部 裕子 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 社会的知性 / 協力行動 / 利他行動 / コミュニケーション / 霊長類 |
Research Abstract |
本年度は、まずチンパンジーとフサオマキザルにおける自発的な身振りと視線認識について調べた。これまでの先行研究では、ヒト以外の霊長類はヒト実験者の細かな視線に応じて柔軟に身振りを変えることはないと報告されてきた。しかしながら、実験状況として被験体が普段使わない指差しといった指示的な身振りを用いなければならない状況であったため、被験体の正確な注意認識能力が反映されなかった可能性がある。そこで、被験体が指示的な身振りを使わない、より自然な状況を用いて、彼らが他者の注意をどの程度認識しているのかを調べた。結果、実験者が持っている餌を要求する場合は、「目を開ける」、「目を閉じる」といった細かな目の状態に対して、身振りの生成回数が異なっていた。しかしながら、テーブルに置かれた餌を実験者に要求する場合には、そうした差は見られなかった。このことから、被験体は実験者の細かな注意の状態に応じて柔軟に身振りの生成を変えることはできるものの、指示的な身振りを用いて実験者の注意を餌に引き付けることは難しいと考えられる。被験体にとってより自然な状況で実験を行った場合には、彼らの正確な視線の状態の認識能力が身振りに反映されることが示唆された。次に、フサオマキザルにおける相手の餌への動機が食物分配行動へ与える影響について調べた。フサオマキザルは、非血縁個体間でも食物分配が見られる数少ない霊長類種であるが、本実験では食物分配場面の前に被験体に相手の餌への動機を操作した状況を観察させ、それによって食物分配の頻度が異なるのかどうかを調べた。結果、相手の餌への動機が下がるような状況を観察した場合には、他の場合と比べて後の相手への食物分配頻度は下がることがわかった。
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Research Products
(1 results)