2005 Fiscal Year Annual Research Report
教育と生命倫理の接点としての「人格」概念の学際的研究
Project/Area Number |
05J02058
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 洋一 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 生命倫理 / 近代教育学 / 人格の完成 / パーソン論 / インフォームド・コンセント / コミュニケーション / 言語行為論 / 死生 |
Research Abstract |
本研究では、生命倫理において「人格」概念が問題とされる状況の吟味を通じて、近代教育学において「よきもの」として省みられることの少なかった「人格」概念を、幅広く捉えなおすことから教育言説を活性化する可能性を探求する。本年度はその一年目として、実際の医療場面でのフィールドワークを含めた今後の研究枠組みの土台の構築のために、国内外の生命倫理学、教育学の文献、さらには医学・法学系の研究プロジェクトや学会が発行する機関誌や研究報告書における語りを分析することで、それぞれの学問領域における「人格」概念の位相や、「人格」概念が深く関わるインフォームド・コンセント(以下、IC)の議論がもつ問題点について検討した。具体的な成果は以下の三点にまとめられる。 (1) 「人格は完成可能である」という教育の前提から、生命倫理にて語られる「人格」概念が「あるか/ないか」を問う二項対立的な図式を内包しているという問題点を明らかにした。他方で、生命倫理から教育の「人格」概念を逆照射することで、「人格の完成」を「よきもの」として自明視する近代教育学がいかなる力学のもとで成立しているのかについて考察した。(日本教育学会第55回大会口頭発表) (2)従来のICの議論におけるような、法理を演繹することで個々のケースの問題の解決を図るアプローチについて、言語行為論や社会構成主義の知見から、その問題点について検討した。その上で、ICの「教育モデル」を提案し、個々のケースにも対応できる医師の判断力養成の可能性について検討した。(日本生命倫理学会第17回年次大会ポスター発表) (3)また、上智大学増渕幸男教授による科研費基盤研究(C)「『いのちの尊厳』教育における生命科学的思想の位置価値と育成課題に関する研究」に参加することで、生命倫理教育をめぐって、哲学、教育学、生命科学といった幅広い領野の研究者と意見交換をすることができた。
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