2007 Fiscal Year Annual Research Report
教育と生命倫理の接点としての「人格」概念の学際的研究
Project/Area Number |
05J02058
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 洋一 Kyoto University, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | インフォームド・コンセント / リスク / 医療における価値 / フロネーシス / 学習文化 / パフォーマティビティ / 生命観 / 「人格」概念 |
Research Abstract |
本研究では、教育と生命倫理において重要視される「人格」概念について、とりわけ生命や「人格」概念をめぐる倫理的判断力をいかに養成するかが課題とされる医療場面をフィールドとして、教育思想・哲学の観点から研究を実施してきた。本年度の具体的な研究活動とその成果は以下の通りである。 (1)昨年度の国際シンポジウムでの口頭発表を、英語論文としてまとめ、Waxmann社刊行の著作において発表した。本成果では、医療コミュニケーションをリスクの観点から捉えることで、医師と患者における「いのち」をめぐる認識枠組みに大きな違いがあることを明確にした。 (2)この議論を発展させ、医療において両者が「よきこと」をいかに捉えているか、またその価値観の共有に向けた教育可能性について、生命倫理学会において口頭発表を行った。そこで、両者において「よきこと」の共有が容易ではなく、円滑なコミュニケーションのために、医師のコミュニケーション能力を「フロネーシス」の観点から検討する必要性について論じた。以上の成果は、QOLといった価値論に一石を投じると同時に、広く専門家に必要とされるコミュニケーション能力の養成に向けた知見を提供しうる。 (3)ベルリン自由大学との合同ワークショップ(2月)での共同発表において、学習の「かたち」が単なる形式的なものではなく、学習内容そのものが反映されていることを明らかにした。今後、本視角をもとに医療コミュニケーションを検討することで、マニユアル化とケース・バイ・ケースの二項対立的で捉えられがちな分析枠組みを再考しうる成果としてまとめる。 (4)増渕幸男上智大教授の研究会と共同で、中国・北京の中国社会科学院を訪問、意見交換を行った。そこで得られた、中国の教科書では「いのち」が「人格」など法概念との連関において論じられているといった知見を基盤としながら、欧米各国もあわせた教科書の「いのち」の記述をめぐる国際比較研究に発展させていく。
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Research Products
(3 results)